8:まっちゃ
2012/02/09(木) 22:55:19.79 ID:jol96cTr0
どこに目があって、鼻があって、口があるのか――
それすらもわからない程だった。
顔面の皮膚は3/4くらいが剥がれ落ちており、それと思われる赤黒いものが周りに散乱している。
恐らく、トラックのタイヤに潰されたのだろう。
優しい笑みを浮かべていた少女の面影は、もうどこにも存在しなかった。
ほんの少し、少しだが、洗剤特有のどこか柔らかい匂いがした。
それが血飛沫の色と混ざり合って、いまだ胃酸の味が残る喉を咽返らせる。
信じたくなかった。受け入れたくなかった。理解したくなかった。
目の前に倒れているのは少女でも人間でもない。
少女であり、人間だったものだ。これなら、全身バラバラの方がマシというものだろう。
自分が最後に見た少女の顔は笑っていた。このむし暑い夏の日にはあまりにも似合わない、爽やかで涼しげな笑顔。
――なのに、こんなのはあんまりだ。
夢なら今すぐ覚めてほしい。そうでなくても、こんなのは嘘に決まってる。幻想だ。空想だ。妄想だ。
きっともうすぐ大きな看板を持った人が飛び出してきて、それには「ドッキリ大成功」なんて言葉が書かれているに違いない。
頭の中で必死に目の前の現実を否定しようとしていた。
――そんな時、どこからか視線を感じた。
まるで真後ろでこちらをずっとジロジロ見られているような――そんな感覚。
重たい頭をのろのろと動かしながら視線の放たれる方向を探す。
誰かと、目があった。
歳は自分と同じくらいだろうか。
服装もなんとなく似ている気がする。
その「誰か」の顔を見て、思考が停止した。
「誰か」が口を動かして何か伝えようとしている。
口の動きに集中し、やっと何を言っているのか理解できた。
「 嘘 じゃ な い ぞ 」
「誰か」は、満足気にクスリと笑った。
その顔は自分と酷く似た人物だった。
―――ぶつん。と
テレビを消す時に似た音が鳴ると同時
目の前が
真っ暗になった。
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