過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/12/03(月) 00:50:17.46 ID:9XAgl6KG0
「眼福眼福。ああいうお店は久し振りだったけど、女子たるもの相応のカルチャーに慣れ親しむっていうのは欠かしちゃいけませんなあ」
数時間前には天高く昇っていた太陽も傾き始め、時は世界を紅く染める夕刻。
ほむらはさやかの軽口に最早言い返す気力も無く、なんで私はこんな茶番と与太話に長々と付き合っているのか、と真剣に悩んでいた。
夜が刻一刻と間近に迫る逢う魔が時。その名が示す通り魔女の活動が盛んになり始める時間帯でもある。
目に映る景色は一面薄紅色に染まり、二人が通り掛かったビルディングの下は墨汁を垂らした硯の様に真黒な闇の中である。
今暫くの時が経てば、現代人の智慧の結晶である夜間照明が灯り此の暗闇さえもなくなる、そんな黄昏時限定の漆黒。
ほむらとさやか。二人は歩く。
橙と黒のシルクスクリーンに浮かぶ染みの如き点が二つ、少しずつ揺らめき乍ら其の身を移して。
「すっかり遅くなっちゃったねえ」
放課後を目一杯使ってほむらを引っ張り回したさやかは、果たして満足したのか伸びをしていた。
此の数時間付き合わされただけで、これ程までに疲労困憊になるものなのか。
そう呆れるやら感心するやら複雑な心境のほむらだったが、思い返すにつけ午前中に声を掛けられ保健室へと連行され、
昼休みは昼食への同行強制、極め付けが放課後をフルタイムで消費してのウィンドウショッピングの梯子なのだから、
ほぼ一日中ほむらはさやかへの貸し切り状態だったのだ。此れで疲れない訳がない。
堪らないのは市中引き回しのフルコースに招待されたほむらの方で、そろそろ堪忍袋の緒も引き千切れて
溜まりに溜まった鬱憤が内側から漏れ出てきても可笑しくないところまで来ていた。
「飽きるほど楽しんだでしょう。私も用事があるしお暇するわ」
「そっか。もうそんな時間なんだよね」
うんうん、と頷きを二三度繰り返すさやかは、自分を納得させているかの様だ。
「暁美さんは、さ……ちょっとでも楽しめた?」
「残念ながら散々よ」
「えー、何でだよー、そこはお世辞でも楽しかったって言うとこだろ!」
歯に衣着せぬ物言いをするほむらに、さやかも不満たらたらで応戦する。
「自分が行きたいポイントを巡ってただけでしょ。観光ガイドとしては三流よ」
「それを言われるとキツイけどさぁ……。大体、暁美さんには物事を楽しもうって気概が足りてないよ!
もしかして、まだ新しい環境に緊張してる? ハッ、まさか――!」
「……なに?」
「暁美さんって、今日女の子の」
「断じて違うわ」
急に神妙な顔つきになって小声で話し掛けてきたかと思えばこれだ。馬鹿馬鹿しくて涙が零れそうである。
そういえば先程から眩暈がしている気がしなくもない。こういう時は、早く帰って寝てしまうに限る。
「でもさぁ、楽しむ姿勢って大事だと思うんだよね。こうして居られるのも命あっての物種だし」
――さやかを置いてこっそり立ち去ろうとしていたほむらの動きが止まる。
「どんなにあの時ああしとけば良かった、って思っても……死んじゃったら、どうにもならないんだよ。
友達と話して、ゴハン一緒に食べて、買い物に行ったりさ。どんなに望んでも或る日突然、なんにも出来なくなる」
「あなた――」
其の時、薄暗がりに負けた街灯が夜の闇を煌々と照らし出す。
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