過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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212:>>211 参考にします。以下予告編・1レスのみ[saga]
2012/12/17(月) 20:41:52.66 ID:LgLEBknr0

「それ」はたった一つだけ、私に残されたものだった。

人は「それ」を酷く忌み嫌った。可能な限り遠ざけ、時として視界の隅にも入らぬ様にと隔離を試み、
然し遂には捨て去ることなど決して出来はしなかった。

人は「それ」を激しく恐れた。同時に「それ」を抱く者をも酷く恐れた。
その行為自体が「それ」を生み出すという矛盾に苛まれ乍ら。

人は「それ」を拒んだ。拒み乍ら其の強大さに呑まれ、取り込まれた。

人は「それ」を望んだ。驕り昂り、己の糧となると見誤り、操ろうとして踊らされた。

「それ」は世界で最も悲しき熱情にして、

最も識ることからは掛け離れた感情であり、

識ることと識られることとを欲する現在の私にとっては、砂漠に水を求める行為にも等しかった。

否、私が求めている物は水ではない。

何故なら、私が求める「それ」こそが木乃伊の様な私を形作っているからだ。

「それ」そのものが乾きの原因であると識り乍ら、「それ」を欲している私という、大いなる矛盾。

なれば「それ」を得た処で、この渇きが満たされることなど到底あり得ない。

だが、識ったところで、矛盾に気付いたところで何だと云うのだ。

心は溢るる渇望を決して止めはしない。

「それ」が人にとって必要不可欠であることを、人は生まれ乍らにして本能で識っているからだ。

故に私は、求めれば乾き、求めざれば猶乾く。

嗚呼、

無限に等しき、終局の視えぬ螺旋地獄の審判長よ。

総てを失い、残った我が身一つをも棄て去ろうとしたこの私に、何の気紛れで「それ」を与え賜うた。

人を怒らせ、復讐に奔らせ。
人を狂わせ、埋められぬ溝を造り。
人を翻弄し、目を覆う惨劇を創り。
人を苦しめ、数多の涙雨を降らせ。
人を謗らせ、不平等極まる格差を生み。

何処へ行く。嘆きと屍ばかりを山と積み上げ。

原初の罪。
嘗て禁断の果実を口にしたヒトが、以来心の底に宿すもの。
どす黒く渦巻く感情の奔流は、唆した蛇よりも激しくうねり、とぐろを巻いて。

誰よりも何よりも人に畏怖され続け乍ら、有史以降常に人と共に在ったもの。


人は「それ」を「憎悪」と呼び、

私は「それ」を「救済」と呼んだ。


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