過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/02/16(木) 00:43:37.96 ID:hAmAlqxK0
「美国、織莉子……ッ!」
斯くして、疑念には悪魔の答えが提示される。
不安は確信に。焦燥は心痛に。
美国織莉子。暁美ほむらが地球上で、最も出遭いたくない人間。
数々の時間軸上、最悪のイレギュラーにして、忌むべき仇敵。
自らの命に代えてでも、無関係な人間を大量殺戮に巻き込んでまでも、鹿目まどかの殺害に妄執を見せる、白色の魔法少女。
それが、ほむらの目前に、居た。
一度きりであって欲しいと、そう願っていた。
魔女の欠片に貫かれ、絶命したまどかを思い出す度に、あんな奴とは金輪際関わることのない様に、とほむらは思うばかりだった。
もしも、今後、出遭ってしまった時は……
必ず、殺してやる。
瞬時に身体中の血液が沸騰し、憤怒と憎悪の火は、ほむらの身も心も激しく焦がす。
……怒りは、激情は、暴力的でどす黒い穢れの色をしていた。
ほむらの、嘗ては紫色の輝きを見せていたソウルジェムが、絶望の黒にジワジワと侵食されていく――!
黒い情念も露わに、我を忘れ復讐心と殺意の塊となったほむらは、
こちらを向き、放心している織莉子の細い首に手をかけ、力任せに締め上げた。
「か……っ」
忽ち、首を絞められた織莉子の瞳が驚きに見開かれ、次いで面貌が苦悶に歪む。
織莉子はほむらの為すがままで、声すら上げることも儘ならない。
みしみしと、首がへし折れるのではないかという勢いで締め上げるほむらの目には、既に狂気が宿っていた。
皆、まどかの邪魔をする。
皆、まどかを殺そうとする。
ならば敵だ。織莉子は敵だ。紛う方なき敵なのだ。まどかを殺そうとする、最たる敵だ。
敵は殺せ。今すぐ殺せ。反撃の暇を与えるな。この女が姦計を企てる前に、握り潰してしまえばいい!
「……はな、……して」
か細い声と共に、ほむらの握りしめて蒼白になった両手に、震える織莉子の手が添えられる。
ほむらはそれを意に介さず、更に両の手に力を込めようとして、……そこで、初めて気がついた。
色白の、肌理が細かい、凡そ荒事には向いていそうにない、織莉子のほっそりした手。
その指に、ソウルジェムを形状変化させた指輪は、無い。
改めて織莉子の全身を備に観察すると、やはりソウルジェムは何処にもなく、また魔力も感知出来なかった。
――この美国織莉子は、魔法少女ではない。
事実を認識した途端、ほむらの熱は急速に冷めていく。
ほむらが首を締め上げていた手を放すと、織莉子は息を吸い込みながら、激しく咳き込んだ。
そんな織莉子を前にして、ほむらは己が仕出かした過ちに、気不味い思いをするしかなかった。
織莉子は、まどかを狙う憎むべき敵だ。
だが、認めたくはないが、今この世界にまどかはもう居ないのだ。
この場でこいつと戦う、殺す必要性は、特に見当たらない。
それなのに、完全に頭に血が上ってしまっていた。
普段のほむらなら、考えられないことだった。
(私、一体何を――?)
原因を究明しようとして、ほむらはすぐに思い当たる。
ほむらの心を映す魂の輝き、ソウルジェム。
それをほむらは取り出して、自身の精神状態を確認し、顔を顰めた。
卵形の宝石は、思わず目を逸らしたくなるほど、黒く醜悪に塗り潰されていた。
穢れの占有率は、凡そ80パーセント。直ちに浄化しなければ、危険なゾーンだ。
つい先刻まで、胸中を覆っていたのとは別種の焦りが、ほむらを支配し始める。
片や織莉子はと言えば、公園で憩いの一時と呼ぶには相応しくない、酷くやつれた顔をしていた。
ほむらに襲われて付いた、首の手形だけではない、それ以前からの痛ましい負荷の蓄積が見て取れた。
目許は散々泣き腫らしたのだろう、血色の悪い赤になっており、唇は乾き、頬も若干こけている有様だった。
そんな織莉子の、死んだ魚の様な眼が、焦れるほむらをじっと見据えていることに彼女は気付く。
織莉子の側から見れば、何の前触れもなく、初対面の相手に暴力を振われたのだ。
注がれる視線が、ほむらを責め立てる類の物であっても、それは寧ろ当然のことだ。
「ごめん……なさい……人違いでした」
ほむらはそれだけをやっと言葉にし、踵を返す。織莉子からの返答は聞かず足早に、その場を辞した。
眼前の織莉子と、自身の心。二つの重荷に圧し掛かられ、ほむらは窒息しそうで、只管もがいていた。
暁美ほむらと、美国織莉子。
決して交わる筈のなかった二人の運命が、交差するのはもう少し先の話――。
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