過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/02/29(水) 20:53:10.05 ID:fRW4icTG0
「……」
ほむらは、無言で織莉子を睨み返す。お前と話すことなど何も無い、と言わんばかりに。
そうして、半身を完全に翻し、今度こそ立ち去ろうとした。
即座に制止の声が入るかと内心身構えるほむらだったが、意外にも背後から反応は無かった。
それはそれで気味が悪いな、と思いつつも、振り返ることなく歩き出す。
細い路地に吹き込むビル風が、一瞬だけ高い音を立てた。
「やはり――」
風切り音を合図にして、再び織莉子の声が響く。
まるで答えを理解したかの様に。他では得難い宝を手にしたかの様に。
その声音は、これまでの怯えとも懇願とも違う、独特の感情を籠めて朗々としていた。
「あなたは、私を憎んでいるのですね」
言葉とは裏腹の、何処か清々しく満ち足りた声色に、しかしほむらは気付かない。
織莉子の核心を突いた問いに、ほむらの胸は再度ざわつく。
気がつくと、自然と答えていた。
「ええ、そうよ。私は、お前を許さない」
ほむらはそれだけ吐き捨てると、路地の角を曲がり、雑踏に紛れて織莉子からは完全に見えなくなった。
後には、やや寂れた路地に織莉子がただ一人残される。
その瞳からは、涙が溢れていた。
時刻は18時を回っている。
街路には照明が灯り、街は昼とはまた違った顔を行き交う人々に見せていた。
活気に満ちた盛り場の外れにある、現実から切り離された空間。
この世ならざる異界の住人、魔女が棲む禁忌のテリトリー。
人の営みの死角に潜むは、人の心身を死角から食らう獣。
ほむらはそんな「街の死角」を片っ端から廻るが、元々統計上、今夜は期待薄だ。
予想通りというか、戦果は全く以て芳しくない。
悪いことは続くものだ、とほむらは、何度目になるかも分からない溜息を吐いた。
これは早々に切り上げた方がいいか。そんな風に考える。
今頃鹿目家では、まどかの通夜が執り行われている筈だ。
ほむらは、心苦しいが今夜は行けそうにない……そう、結論付けた。
それは、単純にグリーフシードの確保という問題には留まらない。
このみっともない今の自分が、事切れたまどかに会えば、きっと二度と立ち上がれなくなってしまう。
魂は絶望に染まりきり、人の形を保つことはなくなり、心さえ失ってしまうことだろう。
そう考えるほむらは、まどかの死を直視することを恐れ、避けていた。
何か別のことを考えよう。そうしなければ、気がおかしくなりそうだ。
血が滲んだ胸の内は、ほむらに現実逃避を選ばせようとする。
しかし、考えない様にと思えば思うほど、考えてしまうのが人というもの。
脳裏に浮かぶのは、昨夜目にした、床に横たわるまどかの姿。
直後、様々な時間軸での、唯一無二の友の無惨な死が、瞼に映っては消えていく。
……こんな状況が、前にも一度だけあった。
目的を失い、時を巻き戻すまでの日々の多くを、無為に過ごした嘗ての時間軸。
極力忘れようと努めた、悪夢の再現が、今まさにほむらの胸を締め付ける。
(美国織莉子……)
見滝原中全てを巻き込んだ惨劇の後、ほむらは織莉子の素性を血眼になって調べたが、
その結果分かったのは、新聞の紙面を躍る見出しに申し訳程度の記事、……それらと、大差ない情報だった。
織莉子の父に掛かる不正疑惑、その後の自殺。これが原因で織莉子は魔法少女になり、まどかの殺害計画を企てたのだと察しはついた。
だが、ほむらはあくまで一介の中学生に過ぎず、強力無比な時間操作能力を持ってはいても、政界の実情になど微塵も詳しくない。
美国議員が何者かに陥れられた可能性も考えたが、舞台の背景となる人間関係が分からない以上
ほむらに打つ手は無く、せめて今後は同じ事態が起こらぬ様にと、祈る他なかったのだ。
――いつしか、ほむらは織莉子についての考察に没頭していた。
尤も、今し方の苦しみを、ほむらに忘れさせるのが織莉子というのは、皮肉と呼ぶしかなかったが。
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