過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/02/29(水) 21:03:05.61 ID:fRW4icTG0
織莉子にとって、長い長い夜が明け、そして陽は高く昇る。
人の群れに紛れ、或いは孤立する様に立ち、当て所も無く彷徨い続け、そして。
何も得られなかった。何も知ることなどなかった。
人の多い場所も、少ない場所も、人など到底居そうにない場所も、
住宅地も、商店街も、歓楽街も、駅前も、オフィス街も、工業地帯も、河川も、田畑も、廃屋も。
思いつく限りの場所は隈なく歩き尽くし、その上で成果は皆無だった。
そうして精も根も尽きかけ、肉体の疲労よりも気力に限界が訪れようとしている織莉子は、木製のベンチに凭れ掛かっていた。
街の中心部から外れに位置する、整地が行き届いた緑地公園の、芝生の傍ら。
ぐったりと弛緩した身体を背凭れに預け、中空を見る織莉子の眼は焦点が定まっていない。
その思考も、今や焦点と同様に不定形をしていた。
(私のしていることは、無意味なの……?)
漠然とした意識の中に、それでも浮かぶ疑問。
絶望の中にあって希望を求める心と、希望を求めるが故に
より深く昏い絶望へと堕ちるのだとする心とが、激しい葛藤となり織莉子を苛んでいた。
親和など望むべくもない、鬩ぎ合う二つの感情が、渦となり織莉子を巻き込む。
揺れに揺れて拡がる心の波紋は、時の経過を瑣末な事態とした。
希望を抱くということが、こんなにも恐ろしいなんて。
父に裏切られた。
友人に裏切られた。
教師に裏切られた。
使用人は私に興味が無い。
知人は私に興味が無い。
他人は私に興味が無い。
世界は私に興味が無い。
織莉子は、救いを求めることに疲れきっていた。
もう、諦めてしまおうか。
そう考えた時――不意に、ふっと肩の力が抜けた。
今までの艱難と重圧とが嘘の様にすっかり取り払われ、身も心も羽の様に軽くなるのを感じていた。
そうして、織莉子は諦観という名の、甘美な毒の味を知った。
あぁ、抗うことを止め、絶望に身を任せるということは、こんなにも心地良い。
そして、その心境に至って、織莉子は初めて父の苦悩を諒解していた。
織莉子の父は、何もかも、この世の全てを諦めていたから、笑うことが出来たのだ。
何日も悩み抜いた末に、もう生きる喜びも、救われる望みも何処にも無いと結論を出して。
現実に絶望し、自ら命を手放すことを決め込んでしまっていたからこそ、……笑顔で居られた。
あれは、生の苦しみから解放されたが故の表情、だったのだ。
織莉子は前触れもなく、木目の浮いたベンチを、ゆらりと立つ。
その様は、宛ら風前の灯火。吹き曝しに躍る、蝋燭の炎。
燃える夕陽に、総身を焼き尽くされ、美国織莉子という人間は、もうすぐこの世から消える。
長らく座ったままだったベンチが、微かに軋んだ。
――私も、お父様と同じ所へ行くのですね。
そうね、行きましょう。お父様、待っていて下さい。
織莉子はお父様を、一人にはさせませんから。
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