過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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44:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga]
2012/02/29(水) 21:04:30.53 ID:fRW4icTG0
今すぐ後を追わなくていいの?
やっと、見つけたのに。私を知っている人に、やっと逢えたというのに。

……織莉子を躊躇させるのは、あの少女の明確な憎悪と、殺意。

暴力を振るわれた。お父様にも、友達にも、先生にも、何処の誰にも殴られたことすらない、自分が。
怖かった。相手の言い分も聞かず、一方的に暴力に訴えるというのが、私には俄に信じ難いことだった。
あの子の後を追い掛けたら、今度こそ逆上した彼女に殺されるかも知れない。

私は、私を見つけてくれたのが、余りにも嬉しくて。
希望を持ったから、また死ぬのが怖くなってしまった。
だから、さっき首を絞められた時も、反射的に口にしてしまったのだ。
はなして、……と。
お父様の死を、あれだけ間近で見て、その死に憧れさえ抱きかけていた筈なのに。
あんなに痛くて、苦しくて、辛い。
そう思ったら、もう死ねなくなっていた。

だけど、彼女は行ってしまう。私を一人置いて、何処か遠くへ行ってしまう。
ここで置いていかれたら、また私は一人ぼっちになってしまうのよ?
二度と会うこともないと分かってしまえば、私は息が詰まって死んでいく。
次また、何処かで確実に会える保障なんて、ない。

あの子は怖い。物凄く恐ろしい眼をしていた。
私の周りの誰に素気無くされた時も、哀しさはあっても恐怖で足が竦むなんてことは無かった。

追い掛けたら、あの子に殺されるかも知れない。
でも、諦めたら私は立っていられない。

――這い上がろう。
もう一度、あともう一度だけ頑張ってみよう。
ここで諦めたら、どのみち私は消えるしかない。
あの子に問い掛けよう。次に逢える保障があるのか確かめよう。
それすらも出来ずに、ただ朽ちていくのを待つなんて堪えられない。

気がつけば、織莉子は駆け出していた。
夕焼け空の向こう側へ消えていく、黒髪の少女の大きさは既に豆粒大で、目視が困難になっていた。
一瞬でも気を抜いたら、煙の様に容易く消え失せてしまう後姿を、見失うまいと距離を詰めた。


公園を抜け、表通りを歩き、橋を渡り、人波を掻き分け、追い掛けた背中も最新の携帯電話より
若干小振りなサイズになった辺りで織莉子は歩幅を縮め、少女との間隔を一定に保った。
織莉子に距離を取った理由を訊けば、どう話題を切り出したらいいか迷っている、と答えるだろう。
その答えは間違いではなかったが、同時に核心を突いてもいなかった。

実のところ織莉子自身、少女に対して抱いた感情が、どの様な類のものかを図りかねていた。
織莉子は、あの少女のことを間違いなく恐れている。これは揺るがない事実だ。
だが果たして、本当にそれだけなのか、ならば織莉子の胸を去来する思いは、一体何なのだろう。
それの正体が分からず、もやもやした気分を抱え、あと一歩が踏み出せずに居るのが、今の織莉子だった。

「一度謝ったでしょう。まだ言葉が足りなかった?」

道を折れ死角に消える少女を追い、人気の無い、閑散とした路地裏へ入って暫くした時だ。
凛と響き渡る、低いけれど耳に残る声音が、織莉子の方へ後姿のまま、首だけを向けて問うてきた。
……気付かれていた。
前置きも無しに突然話を振られ、織莉子はなんだか責められている様な心地がして、思わず身を竦めた。
しかしながら見通しが良く、通行人も二人の他に居らず、寂れた雰囲気の漂う一本道に、身を隠す場所など存在しない。
織莉子は、いよいよ腹を決めねばならないらしい、と唾を飲み込む。
が、実際問題として、目の前の少女にどう接すればいいのか、未だに決めあぐねていた。


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