過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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6:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga]
2012/02/11(土) 17:55:51.91 ID:SSZUNYll0
まどかの住む家。
閑静な住宅街にある、親子4人で暮らすには十分な面積を誇る、その佇まい。
宵の空に負けじと、煌々と灯る光が見えてきた。

様子がおかしいとほむらが気付いたのは、家まで大分近付いてからだった。
その違和感を一言で表すなら、……人の気配が多過ぎた。
いや、実際に居るのだ。まどかの家の前には、ほむらにも見覚えのない者が数人居た。

そして、彼らは皆一様に黒い礼服を着込み、門前の男性に会釈し、
何事か話すと、やがて粛々と家の中へと入っていく――

その光景を理解した時、ほむらは顔からゆっくりと血の気が引いていくのを感じた。

「まさか――」

いや、違う。
そんなことがあってはならない。
それはほむらにとって、絶対に許されないことなのだ。

頭(かぶり)を振って、脳裏に浮かんだ最悪のビジョンを打ち消す。
目前のアレが何なのかは分かってしまった。
だが、まどかだと決まった訳ではない。
確率にして4分の1だ、まどかじゃない可能性の方が高いんだ、そんな身勝手な願望を抱く。

眩暈がした。
動揺して平衡感覚を失ったほむらは、ふらふらと覚束無い足取りで門前まで辿り着く。
そのまま受付の男性を無視して、靴を脱ぎ、家へと上がり込んだ。
壁面に何やら貼り紙がしてあったが、ほむらがそれに注意を払う余裕はなかった。

リビングの隣の部屋、奥まった場所に、人が集まっている。
事ここに至って、ほむらは足が竦んで動けなくなるのを、否応無しに感じていた。
まどかではない、という希望を求めながら、確かめねばならずにここまで来た。
そして、その答え次第では、ほむらは奈落の底へ沈むことになる。
そう考えると、恐ろしくて二の足を踏むのだ。

確認する前に、一度呼吸を整えようと思ったが、一向に動悸は治まらない。
身体の芯から指先まで、震えが止まらない。

留まっていても事態は好転しない。
何らかの答えを得ぬ限り、今の心境からは解放されないからだ。
ごくり、とほむらは唾を飲み込んで。

人の輪の中心で、一人静かに横たわる、物言わぬ鹿目まどかの姿を確認した。

「あ、ああぁぁぁっ……」

今度こそ、ほむらは完全に理解した。
理解してしまったからこそ、力なくその場に崩折れる。
弱々しく声を上げ、行き場を失った感情が爆発して弾ける。

私は、また、亡くしたのだ。
ぐわんぐわんぐわんぐわん……
誰かの声が頭の中で何度も反響するかの様に、思考を幻聴に侵される感覚。
視界は目まぐるしく上下が入れ替わり、座っていることさえ出来ない。


――今回も、ハッピーエンドなんて、ない。


混濁した意識の中、
ほむらは辛うじて倒れることを拒みながら、
そんなことを、思った。



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