過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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66:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARマンがお送りします[saga]
2012/03/25(日) 15:06:10.15 ID:rdb8npsf0
魔女に魅入られた都市――魔都。
見滝原には珍しく、人知れず街に巣食う怪異が鳴りを潜め人々が穏やかな夢の世界に居る、そんな一夜も過ぎ去っていく。
夜の闇に取って代わるのは、東の空から顔を現す暁光。

いと眩しき暁を姓に冠しながら、その眼に昏い光を宿した少女は、
眠りの中にあった意識が覚醒を果たしても、未だ夢現の狭間を漂う心地がしていた。
それは、彼女の逃避願望の投影だったのかも知れない。

閉じたカーテンの隙間、中心部から光が射し込み、暗闇に馴染んだほむらの網膜を刺激する。

「――ッ」

ほむらは思わず目を固く閉じる。
掻痒感から点眼した時の様に、朝日が目に沁みる感覚はどうにも好きになれない。
脂がびっしりとこびり付いた目許には、目薬に負けて涙が滲んでいる。

迫り上がってくる欠伸を噛み殺し、とてとてと洗面所へ向かい、念入りに洗顔を行う。
昨日の様な大雑把な真似はせず、洗顔クリームを使い垢を擦り、丁寧に流水で寝汗を洗い落とし、
腰まで届く豊かな髪を丹念にブラッシングし、解れを直すことで眠気覚ましとする。

続いて、茶の間兼勉強部屋である自室へ戻ると洋服箪笥を開け、ハンガーに掛けておいた白いブラウスと、
裾が膝まで伸びた紺色のフレアスカートに、金のワンポイントが入った黒いハイソックスを取り出し、手早く着替えて身支度を整えた。


ほむらは壁に立て掛けてある、脚を畳んだ卓袱台を部屋の中心に構えて、久々に朝食の準備を行う。
転入まではまだ日があることだし、今から慌しくする必要は無い。
調理に多少の手間を掛ける、時間の余裕くらいはある。

ほむらが寧ろ気掛かりなのは、絶望までのタイムリミットの方だ。
魂の輝石、ソウルジェムの濁りは未だ取り払われておらず、こればかりは如何ともし難かった。
……勿論、ただ無策ではなく、対策や心当たりは幾つか頭にある。

ほむらは一先ず、問題は頭の隅に追い遣り、今は家事に専念することにした。
お世辞にも経済状態が良好と言えないのは、ほむらが借りている部屋の築年数や各種設備、内装が如実に物語っている。
最近は時間に追われ、携帯食などで食事を済ますことも多かったが、自炊は可能な限りした方が良い。

ほむらは台所に行き、無地の白エプロンと頭には三角巾を装着し、水場で薬用石鹸を用い手を洗い、入念に殺菌消毒をした。
調理に必要な食料は、初日に買い置きした物を使う。
冷蔵庫を開けると、適当に食材を吟味し、何を作るかも割合適当に決める。
時間もあるし、今日はポテトサラダにしよう、とメニューも早々に決定する。

鍋に冷水を多目に――野菜がひたひたになるくらい入れ、真ん中で切り、芽を取り皮むきした馬鈴薯2個と人参半分を放り込み、強火にかける。
根菜を茹でている間に、玉葱半分と胡瓜一本をスライスしてボウルの中でよく塩揉みし、時間を置いて水気を搾る。
野菜への火の通り具合を菜箸で確認し、十分なら火を止め湯だけを捨て、もう一度鍋で野菜の水分を飛ばす。
……茹ですぎで煮崩れない様に留意せよ。
芋と人参を一口大に手早く切り、水気を除いた薄切り野菜と一つにし、マヨネーズと黒胡椒をかけたらよく混ぜ込む。
この時、ジャガイモとマヨネーズは特によく絡めること。マヨネーズが足りないと味気無いので要注意。

そろそろ、トーストの準備もしておこう。
六枚切りの食パンを年代物のオーブントースターに一枚入れ、一旦目盛りを6の地点まで回し、
トースター内部が赤色に熱されたのを確認してから2と3の中間地点まで引き戻す。
パンが焼けるまでの時間に、油は使わずフライパンを火にかけ、熱くした鉄板へ生卵を落とすと、
程よく白身が固まり始めた頃合を見計らって、少量の水を外周に注ぎ足す。
フライパンに蓋を被せ、すぐさま火を止め余熱で蒸し焼きにすることで黄身は半熟、白身はプリプリ、サニーサイドアップの出来上がりだ。
食器棚から洋皿や箸、バターナイフを取り出すと、トースターが鳴らすはタイムアップの合図。
素早くパン皿に乗せたこんがりキツネ色の食パンが冷めない内に、さっと表面にマーガリンを塗る。

……完成。


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