過去ログ - アンリ士郎「汝の欲す所を安価にて為せ!(キリッ」一同「へー」
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844:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/03/21(水) 00:27:45.27 ID:E22uRmbx0
「…………どうやらあれは彼女から分かたれた影のようですね。」
 

 僧は静かに私を宥めるように話す。
 彼の弁の通りなら、私たちの前に現れ襲ったサクラは
 身を裂いて別たれた分裂体の一人だということだ。
 ゆえに、まだサクラの魂が消えた確証はない。
 ほっと息をついた一瞬その後、こそこそびくびくしている自分の滑稽さに、
 私はなにをやっているんだという疑問がふと頭の片隅に立ち上がった。


 不正滞在者――度重なるセラフ内での蛮行に、あのおとなしい彼女がそこまで強硬な手段をし続けている事実。
 英霊ですら通常抗うことなぞできない侵食を耐え続ける苦痛と恐怖に
 雨上がりの夜気に冷やされた頭がいまさらながら常識を捻り出し、それを合図にしたかのように目が冴えてきた。
 

 先の彼女を見るからに、既にもう正気はないかもしれない。
 でもまだきちんと手当もできる。
 かつてこの世すべての悪(アンリマユ)の侵食にあそこまで耐え延びた彼女のことだ。
 あまり長く猶予がないだろうが、まだ一人で耐えてがんばっているかもしれない。
 分が悪いだろうが、まだサクラを救う手だてがあるかもしれない。
 これ以上、面倒に関わらずに済ませサクラを救う。
 そんな言葉が固まり、私の頭の中で杯がゆらゆらと振れた。
 

 いま放り出せば幻のように消えてしまう、きっと一生後悔するだけのなにか。
 秤の動揺が一方に振り切って止まり、後はもう二度と振り返ることなく、次の場所に戻っていった。


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