過去ログ - 鑢七実「ここは………どこかしら?」布束砥信「学園都市よ」
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780:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/02/04(月) 00:59:20.68 ID:ouorT+Ut0
不思議だった。

なぜ人を殺しておいて、全く不幸な顔をしないのだろう。どうして精神が壊れないのか。押し潰されないのか。

自分の生きる道が真っ暗になった。元から目を瞑っているから真っ暗だったが、方向性が全く掴めなくなった。

足が止まり、目を開け、耳を開く。

進むべき方向はどこだろうと、周囲を見渡す。


すると、ようやく自分がやって来た事の重大さに気が付いた。

棘に刺さり血だらけになった素足。巨木とぶつかって腫れた額。枝に裂かれて痛む肌。

そして周りに倒れる無数の人間たちの血の海―――。

大きく口を開けて叫びたくなった。


―――“自分は数多の人の命を奪っておきながら、なぜ覚悟も無く、後悔も無く、ただひたすらに逃げていたのか。”


背後に、誰かがいる。その誰かがポンっ、と肩を叩いた。その正体はずっと逃げてきた恐怖。

逃げ出したくなった。とっさに足が前に出る。

だが、ここで絹旗はその行動に疑問を持った。


逃げて、逃げて、逃げまくった半生だった。

『殺してきた人間たちが怖い』『次は自分じゃないかと疑って怖い』『自分に押しかかる不幸が怖い』……そう、童の様に泣き続けた人生だった。

怖くて怖くて、だから逃げた。

何と弱い自分だ。情けない。


あの青年は、あの鑢七花は違っていた。

人の命を奪うと言う行為を行う事に覚悟を決めていた。

ちゃんと奪ってきた命と向き合っていた。

そしてそれを背負っていた。

故に強いのだ。

故に強固なのだ。決して折れず曲がらず、鋭い切れ味を保っている。

これだ。

これが鑢七花と言う崖の正体なのだ。

鈍な自分とは違う。

彼は確かに虚刀流の当主と言う最初から強かっただろう。

だが、鑢七かの本当の強みは覚悟の強さ。

これが無いから自分は弱いのだ。

過去の自分と自分の不幸に向き合う事が出来ないから弱いのだ。

暗い暗い夜の帳の森も、棘だらけの道も、尖っている枝も、血の海も、全て背負える覚悟が無い小娘では駄目なのだ。


あの日の事を覚えている。忘れるものか。人生で一番大切な日だ。

親に捨てられ、血の海の中を走り回り、死の渦から逃げてきた人生の夜を過ごし、ようやく目を開け、耳を開き、口を開けた日だ。

もう自分は闇夜が怖くて泣き止まぬ童ではない。





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