過去ログ - 鑢七実「ここは………どこかしら?」布束砥信「学園都市よ」
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[sage saga]
2013/02/15(金) 18:46:07.30 ID:WQVl3/1X0
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あの夜の事を、よく覚えている。
物忘れの多くて、決して良くはない頭でも覚えられたのは、あの、月がとても綺麗だったから。
それと、自分を見つめるあの眼がとても、決意に満ちているそれだった事がとても印象的だったからだ。
初めてだった。あの決意に満ちた眼で見つめられたのは。………とあの眼を表現しても、何か微妙に間違っている感じがする。
でも、そんな表現でしか言い表せないから、そう言う眼なのだと思った。
「―――――。」
七花は静かに歩く。何も言わず、口を堅く閉じる。
今にも爆発しそうな怒りを、出すべきところで最大限の威力で爆発させようと、堪えている。今ここでそれを開放するべきではない―――と。
「―――――。」
絹旗最愛と言う娘は、とてもとてもよくできた娘だった。
本当に一緒に過ごした時間は少ないけれど、頭が善くて優秀で、弱かったけど、面白い人間だと思っていた。人間として好感を持てる人種だった。
「―――――。」
歩く七花と立っている七実。怒りと憎しみで向かってくる弟とそれを迎え撃つ姉…。
その距離は見る見る内に縮まっていった。その距離10m。そこで立ち止まった。二人はお互い、数十秒は何も言わなかったが、先に口を開いたのは姉だった。
「じかに見ると、確信が持てるわ。―――強くなった、本当に。よくそこまで練り上げたわね」
七実は、少し嬉しそうな顔で七花を見つめる。
「私を殺してくれた時より、何倍も、何十倍もたくましくなってくれた。なるほど、否定姫さんが仰っていた、完了形変体刀のお話は本当の様ですね。姉として…いえ、鑢家の者として誇らしい限りだわ。本当に嬉しい」
その目は姉が出来の悪い弟の成長を見て喜ぶそれだった。だが、その姉を鬼の目で睨みつける弟。
「それはどうでもいい。ただ、―――いくらなんでも、姉ちゃん……あれは許せねぇ。絹旗をよくも……」
「どうしてかしら? あれは剣士として、一人の刀として戦ったのよ? 絹旗さんは圧倒的戦力差がある事は抜きにして、この私に戦いを挑んできた。それは死ぬか生きるかの殺し合い……。七花、あちらが殺してくるのなら、こっちがそれに応えなくてどうするの? それは戦闘を放棄するのは、存在自体が刀である私自身を否定する事なのよ?」
姉は弟を諌める。七花の表情はさらに険しくなる。どう見てもその態度は、殺しに来ようとする人間に対するそれではないからだ。どう見ても舐めてかかってきている。
だからつい声を荒げてしまう。
「姉ちゃん………ッッ」
だが、甘い弟には昔からとことん容赦ない七実らしく、その言葉に覆い被せるように言葉を投げつける。。
「―――なら七花。あなたは同じような事を言えるのかしら?
真庭蝙蝠さんや敦賀迷彩さん、錆白兵さん、そして左右田右衛門左衛門さんに、あなたが今まで斬り殺してきた人間に。また、その方々の親族や親しかったご友人の方々にも言えるのですか?」
「―――っ」
ぐうの声も言えなかった。
「あなたはとがめさんとの旅で心を創り、私との戦いで身内の死の苦しみを知り、彼我木輪廻さんに人を殺める事の罪深さと覚悟の必要性を知り、そして左右田右衛門左衛門さんとの戦いで究極の刀として完了した。
―――でも、その言葉を聞いてがっかり。あなたは外見は強くなりましたが、内心はさらに錆ついてしまったのね。
そんな甘い弟に育てたつもりは無くてよ」
「……。」
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