過去ログ - 鑢七実「ここは………どこかしら?」布束砥信「学園都市よ」
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919:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/02(火) 03:02:37.74 ID:2lbVeYvl0
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次回予告


赤い。

赤い点が、二つ。

真夜中の暗闇に紛れて、二つの赤いルビーの宝石が二つの眼があった。


「………いやぁ、まったく。やっとここまでたどり着けた。苦労したよ」


独り言だった。

彼は…いや、彼女かもしれない。それほどまで、それの声は中性的だった。その中性的な声を持つ彼、ないし彼女は、自嘲気味につぶやく。


「まったく、アレイスターも困ったものだよ。僕の存在を知ってから、ずっと僕を警戒し続けてきたんだから」


やれやれ、と、困ったように呟く声は、怒りも笑いも無かった。


「約100年前に僕の存在を知るや否や、僕の邪魔ばかり。そのせいで、ここ100年でエネルギー回収が殆ど滞ってしまった。―――でも、これで一安心だ」


『一安心』

それは、自分の生業とする行為を出来るからか。それとも、それに生き甲斐を感じているのか。否、それが彼らの存在意義であり、使命であり、彼らそのものであるからだ。


「アレイスターが、あの街を造ってくれたからね。あれからもう50年以上たった。収穫の時期だ」


彼、ないし彼女がいるのは、とある小高い山の上だった。そこから明るく光る、高い壁に囲まれた街を見据える。


「あの街には、人の願望と希望と絶望に溢れている」


彼は、ないし彼女は感想を述べる。

その数は、天に煌めく無数の星々と同じくらいに輝く街の灯りと数と同じ数だと。


「―――――ある少女は、自分を救ってくれた少年の為に、何かをしたいと願っている。
―――――ある少女は、自分を助けてくれた少年に正体不明の心を抱いていて、それにモヤモヤしている。
―――――ある少女は、自分が支えるべき少年の為に、その命を投げ出す覚悟を決めている。
―――――ある少女は、自分の身近にいる少年の苦悩を、どうにかして取り除きたいと思っている。
彼女らは皆、強力なチカラを持つ少女たちだ。僕と契約してくれるかはわからないけど、きっと二つ三つ会えば何とかできる筈だ。
そして、―――――ある少女は、自分には全くないチカラに苛立ちを募らせている。
この少女は、二つ返事ですんなりできる筈だ。この子の才能は高い。しかも誰よりも願いが強い分、いい収穫になるだろうね」


と、独り言を言う彼、また彼女は、こうも呟いた。


「願望、希望、切望……それらはブッタと言う青年が唱えた煩悩と言う、悪徳そのものだそうだけど、それを持ってこその人間だ。そして、世間風俗の品格は低迷し、その煩悩を色濃くなっている、この現代。望みと願いの大きさは、昔からすると、その体型と同じようにブクブクと太ってきている。
そして、あの学園都市はそんな少女たちが何十万人といる。それも、人の身に余る能力を手に入れたいと言う、並外れた奇跡ばかり。
他の都市とは比較にならない程にボリュームを感じるね。むしろ楽園だ。きっと人間は、油田を見つけたらこんな感覚をするんだろうね」


楽しそうに尻尾を揺らす。

が、彼、ないしは彼女の表情にはまったくの変動が無かった。目が笑っていなかった。口も、まったく微動だにしない。もっともそれには感情と言うものが欠落しているのだろうか。

否、彼には、彼女には、感情と言うものは……個性と言うものは遺伝子の悪戯で全の中の一の異常。先天性異常者が持つ『疾患』である。

彼、又は彼女には、感情から生まれる個性と言うものが途轍もなく気味の悪い『病気』にしか見えなかった。

恐らくこの世界で最も集団行動を善とする種族なのだろう。だが、それは度を行き過ぎていて、気味が悪い。

逆に、『ヒト』と言う種族の個々に独立した個性がある事が、気持ち悪いのだ。

だから、彼は、彼女は人の心がわからない。その逆も然りだ。個性があるヒトである限り、この異生物のココロがわからない。

だからこそ、彼は自らの使命を全うできるのだ。


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