過去ログ - 吹寄「上条。その……吸って、くれない?」 part2
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55:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage saga]
2012/03/15(木) 02:06:14.43 ID:iLHIXR/Lo

「カミやん? 姫神さんとの件って――」

青髪が何を言おうとしたのか、上条は理解しなかった。
それより前に、またその名前に疎外感を覚えた、傷ついた吹寄の表情を見てしまったから。

「あっ……」

――それは、上条にとっても突発的な行為だった。心が、理性より先に上条の体を突き動かした。
上条が、吹寄の腕を引っ張って、胸元に引き寄せた。

「上条ちゃん。吹寄ちゃん」

正直、担任の教師の目の前というのは気恥ずかしい。
だけど、もう腹は括ってしまった。

「一回しか言わないからな、青髪。それとそこらでこっちを見ている連中。
 ――俺が好きなのは、付き合ってるのは、吹寄だ」

辺りに並ぶクラスメイトの顔が、一様にぽかんとなった。
そして小萌先生の顔が、にっこりと笑う。だって嬉しいのだ。可愛い教え子二人が、お互いを好き合っているなんて。

「嘘、やろ?」

搾り出すような、青髪の一言が教室に響いた。
それはそうだ。だって対上条属性の女とまで言われた、あの吹寄制理が、よりによって上条当麻の恋人になっているなんて。

「嘘じゃねえよ。嘘で女の子を傷つけるのは最低だ。俺は、吹寄制理に惚れてんだ。文句あるか!」

上条が付いた嘘は「一回しか言わない」のくだりだけだ。もうここまで来たら何度でも宣言してやる気だった。

「お前らの知らない制理の可愛いところも、たくさん見つけた。可愛い彼女ができてめちゃくちゃ充実してる。今俺は幸せだ。悪いけど、これ以上つまんねー噂を広めないでくれるか」

きゃー、という風に小萌先生が頬に手を当て体をくねらせる。自分が恋人だと言われたみたいに、顔が真っ赤だった。
そして真実についていけない青髪が、呆然とつぶやいた。

「吹寄さん。カミやんの言ったことって……」

吹寄も、よく見たら顔が真っ赤だった。かつてこんなにも可愛らしい表情をクラスメイトの前で見せたことはなかった。
あの吹寄制理が、女の子の顔をしていた。

「制理」
「……」

吹寄は、上条の呼びかけに応えられなかった。
だって今から自分は、絶対にありえないくらいの、恥ずかしいことをしようとしているから。
上条の、二の腕あたりをギュッとつかんだ。
そして。

「ふきよ、せ――」
「わぁぁ、わぁぁぁ!」

――――吹寄制理は、衆人環視のその中で、上条当麻にキスをした。

「――――当麻、大好き!」

もうだめだ、と吹寄は思った。これ以上はどうあがいても周りに視線をやることはできない。
だから上条の胸に飛び込んだ。誰からも顔を見られないように、懐の深くまで。

「お、俺も大好きだ。制理」

上条も、もうだめだというか、何か、「終わった」というような感覚を覚えた。
これで間違いなくバカップル認定される。自分でもアホの極みだと自覚できる。
だけど、嫌じゃなかった。きっと吹寄もそうなのだろう。
裁きを受ける被告のつもりで、上条は吹寄を抱きしめながら周囲を見回した。

「う、そ――。そんな」

青髪が、クラスメイトの男子が愕然とした表情でこちらを見る。事実をまだ、受け入れられていない。
土御門がニヤけながらため息をついたのが見えた。
クラスの女子が「あれ、これ、特大級の事件なんじゃ?」と今更ながらに事実を認識し始める。
小萌先生が、引き金を引くように、にっこりと笑って祝福してくれた。

「おめでとうです。上条ちゃん、吹寄ちゃん。末永く、幸せになってくださいね」

数秒後。
飽和する阿鼻叫喚の声で、教室が爆発した。



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