533:ブラジャーの人[saga]
2012/06/13(水) 20:17:53.95 ID:0l1aWSKh0
それから三時間。一方通行は自分が呼ばれないことに安堵を覚え、この状況にもすこし慣れた。
隣の番外個体も同様で、彼女もジュースを飲みながら、時々足を伸ばしたりしている。
一方通行が二本目の缶コーヒーを買おうと立ち上がった時、黄泉川愛穂も駆けつけた。
「まだ産まれてない!?」
「まだ。もう三時間経ってるけど」
「そっか」
「黄泉川、学校はどォしたンだ」
「もう私が担当する授業はないし、初孫が産まれるって言って早退しちゃったじゃん」
ある筋からは恐怖を抱かれるほど教育熱心な彼女にとって、私情で早退するなんて珍しいことだった。
三人揃っても、ただ待つことしかできない。しかし賑やかな黄泉川が混ざったことによって、その場は途切れぬ会話が交わされる。
黙りっぱなしで重くなりがちだった空気が和らぎ、一方通行と番外個体の心は軽くなった。
しかしそれもつかの間で、漏れ聞こえる打ち止めの叫び声がより悲痛さを増した時には、
自然と一方通行は分娩室の前に立っていた。杖は長椅子に残したまま、扉に手をついて。
ついに彼は、呼ばれてもいないのに中に入っていく。
手術衣も着ないままなのは良くないのでは、と思った黄泉川が止めようとするが、番外個体が、「今反射中だから平気だよ」と、彼の背中を見送った。
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