554:ブラジャーの人[saga]
2012/06/18(月) 00:41:52.89 ID:Fz6z8l7g0
打ち止めは半月ほど入院することになった。その間、一方通行は毎日足繁く病院に通い、
ほとんどの時を一緒に過ごした。打ち止めが妊娠してからは遠方に出向く仕事は入れないようにしておいたし、
「仕事はいいの?」と口を尖らせる打ち止めを軽くいなして、妻と息子にべったりくっつく。
あの番外個体も、三日に一回という出勤態度を改め、毎日顔を出している。
彼女の体の調整に気を揉んでいた一方通行や冥土帰しにとっては好ましいことだった。
入院といっても、著しく消耗した母体を慮っての処置なので、こうして中庭を散歩したりできる。
病院に居を置く妹達から贈られたベビーホルダーに護を収め、打ち止めはゆっくり一方通行と歩いている。
「明日は懐かしの我が家だね、ってミサカはミサカは早くブラちゃんに会いたいな」
「オマエがしばらくいねェから、アイツちょっと拗ねてンな」
「えーそうなの? もう今日退院しちゃおうか!? 早く弟に会わせてあげたいし」
弟とは、もちろん護のことである。ブランカにとってこの子は弟分だろうとの、打ち止めの意見だった。
「いいや……どォせ明日だ。それより、寒いからもう部屋に戻るぞ。護が風邪でも引いたら事だ」
「こんなにグルグル巻きで抱っこされてるのに、寒くなんかないよねー?ってミサカはミサカはマモちゃんに同意を求めてみたり」
「だう」
「乳児にンなこと訊くなよ」
「あだ」
大天使から「お父さんに似た不思議な子」と言われていたので、一体どんな赤ん坊なのかと楽しみでもあり、不安でもあったが、ごく一般の子と大差ないように思えた。
ただしほとんど泣かない。おしめの時も空腹の時も「う〜」とむずがって不快を訴えるのみだった。
(眠いらしい時には泣いたっけか)
打ち止めの肩から吊り下げられたホルダーの中、黒い瞳で見上げてくる息子の頭を指先で撫でる。うっすら生えた髪も黒。
どうやら色以外は一方通行似のようだ。
「ほら、行くぞ」
「もう、結局自分が寒いだけなのよきっと、ってミサカはミサカはお父さんは寒がりだと教えてみたり」
背中を向けつつも、後からついてくる妻を、足をとめて待ってから歩きだした。
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