602:ブラジャーの人[sage]
2012/06/22(金) 00:57:30.66 ID:XUfJ5ZpI0
その後は二人とも喋らず、ただ睨み合うだけ。見かねた冥土帰しの「難しい話はまた今度にしなさい」という助け舟でもって、
一方通行は部屋を出た。扉が開いた隙に駆け込んできた小さな影は、父親の制止も聞かずに垣根に近寄る。床には点々と水を零しながら。
「! 待て」
「はいお水! ここおいてく! 行こパパ!」
怒られる暇を与えないように、一人で勝手に水を運び、父親の手を引いて退散する。「ママはどこにいるの?」と話題の転換を図ることも忘れない。賢しい三歳児だった。
「あとで看護師を寄越そう。今は体を落ち着けるんだね?」
冥土帰しもいなくなって半時間後、体のあちこちからチューブが抜かれた。
垣根は肩を回し、伸びをする。ベッドから降りると、情けないことによろめいてしまった。手をつかなければ立てない。
「くく、ダッセぇ」
ベッドサイドに放置していたコップの水が、垣根が起こす振動を受けて波紋をおこしていた。
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