過去ログ - 吹寄「―――がんばりなさい、鋼盾掬彦」
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30: ◆FzAyW.Rdbg[saga]
2012/03/18(日) 21:05:50.35 ID:Xh4vPIL2o


「……頭痛も、それが原因だ。
 明後日にはきみは倒れてしまうらしい」

「……気付いてたんだね、きくひこ」


 騙せてると思ったのに、と少女はいたずらっぽく呟く。

 ―――よし、ステイルに聞いてたということは内緒にしておこう。


「ぜんぶまるっとお見通しだ、きみのことなんて一発だぜ」

「ふふ、うそつき。
 わたし、いっぱい嘘ついてるんだよ」

「へえ、それはそれは」

「嘘じゃないもん。
 それに、わたしだってきくひこやとうまのことならお見通しかも。
 ―――そのほっぺたの傷のこととかも」


 鋼盾の頬の傷―――神裂に先ほど付けられたそれ。

 魔力の残滓でもあったのか、それともただのハッタリか。

 どちらにせよ、大正解だった。


「怖いね……頭痛、大丈夫?」

「だいじょぶ。
 いまは、ずっと楽だよ、時々ずきっとするくらいかも」

「そっか」


 嘘かもしれないな、とは思ったが、突っ込むのも野暮だった。

 こうして話ができている以上、深刻なものではないはずだ。

 ―――だが、ステイル曰く“それが彼女を昏倒に追い込むことになる”という。


「なでてくれたら、それもなくなっちゃうかも」

「……はいはい」


 鋼盾の表情に何を見たのか、インデックスはなんとも可愛らしいことを言ってくれる。

 思わず笑ってしまった鋼盾は、振り返り乞われるままにその頭を撫でる。

 少女は猫のように心地よさげにその感触を一頻り楽しむと、礼を言って鋼盾を見上げた。


 翠緑の双眼が、まっすぐと鋼盾を射抜く。

 そこには先ほどまでの甘やかな笑みはなく、ただ静謐な覚悟の表情があった。




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