過去ログ - 【まどマギ】杏さやSS -SS速報VIP

過去ログ - 【まどマギ】杏さやSS

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3:神無月うりゅー
2012/03/21(水) 10:08:42.48 ID:uEYtgW5g0

気付けば深い海の底にあたしはいた
さっきまでの光景がまるで嘘みたいに色褪せていく
実体を保てなくなったあたしの身体は、もうとっくに朽ちていて――
理性では逆らえない何かに突き動かされる中
あたしは最後の最期で幸せな夢を見ていたのかもしれない…
あぁ…どうしてこうなっちゃったのかな
正義の味方になるって決めたのに
魔法で誰かを幸せにできるって信じていたのに
なのに、あたしはもう魔女で――
軽々しい事を言っていた頃の自分が嫌になり、また負の感情が連鎖していく
また人だったあたしが好きだった人たちの名前を思い出す
それが自分の意思を保つ為の鎖になってくれるのなら――
まどか――
仁美――
マミさん――
ほむら――
あと…一人――
あたしの我が侭に付き合せたせいで、自分を犠牲にしてしまったあの子に
一人ぼっちになったあたしに、一緒にいてやるよと手を差し延べてくれたあの子に
佐倉杏子――
最初は殺し合う仲だったっけね、あたし達
顔合わせる度にぶつかって、喧嘩してさ…
今思うと何やってたんだろうって…笑えてくるよね
ほんの短い間だったけど――
あれはあれで、結構楽しかったんだよ？
いっつも食べ歩きしてる事にいちゃもん付けたり…
学校に行かない事を不良だーってからかったり…
あんた悩みなさそうだよねってとぼけてみたり…
あの時は単純に嫌味だけで言ってたかもしれないけれど…
もう戻る事のできないあたしには、眩しすぎる光景で――
だからつい、また求めてしまう
もしも本当に、奇跡ってものがあるのなら
もう一度だけ…
あいつと喧嘩してみたい
杏子…
杏子…ここは暗いよ…冷たいよ…
あたし…寂しいよ…
あたしを呼んで…
もう一度…あたしの名前を――

…や……さ…か…
さ…か……やか…
さやか…

「さやかぁぁぁーーーーッ!!!」

あぁ…あたしもここまでかな…
杏子の幻聴が聞こえるや…なにさ…
あたしは…ここまであの子に依存して――

「さやか！このバカ…何やってんだ!!さっさと気付け!!」

いや…これは――幻聴なんかじゃない
杏子が今必死に戦ってるんだ…

「こんなになって…何が正義の味方だ！我が侭にも程があるぜ…さやかぁ!!」

ホントにね…
あたしやっぱりバカだよ
バカで我が侭で強がりで…
結局あんたがいないと何もできないんだね…

「いいよ…さやか。一人ぼっちは寂しいもんな…一緒に居てやるよ……さやか」

駄目だよ…杏子…
あんたまでこんな所に来ちゃいけない
ここにいるのはあたしだけで十分――ううん
二人揃ってここに閉じ込められるくらいなら…いっそ――
あたしから出ていけば、それでいい！

「杏子ぉぉぉーーーーッ!!!!」

手を伸ばす
この子があたしにそうしたように
あたしも杏子に手を差し延べる
差し延べ合った手と手が繋がれる――
お互いの温もりを確かめ合うように――
愛と正義が勝つストーリーって、こういうのを言うんだね…

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