過去ログ - ペルソナっぽい悪魔設定のシェアワでお話を書いてみたい人集まれ
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[saga]
2012/05/15(火) 06:48:15.56 ID:RB+3zDE9o
それは肉声ではなかった。
はっきり聞こえたはずなのに、聞こえたと断言するのが難しい、そんな声だった。
(誰だ?)
『我と契約を結べ。さすれば汝らの命は救われん』
声は一方的に告げてきた。
訳が分からなかったが、それでも漠然と理解する。
(俺たちを助けてくれるのか……?)
『代償を引き渡せ。汝が最も愛し、最良とするものを』
にわかに鼓動が早まった。
声は大切なものを引き渡せという。だが今、そんな物はない。あるのはこの身、命だけだ。
いや、とほどなくして気付く。この声は命の代わりに命を差し出せと言っているのだ。
恐らく助かるのは一人だけ。
片方を捧げて片方が生き延びる。だが、彼女を捧げるのは論外だった。
「おいお前!」
ありったけの声で叫ぶ。
「恭子を助けてくれ! "俺の命"を――」
持っていけ。言いかけて。
「駄目……」
小さな声に遮られた。
はっとして見やると、気を失っていた恋人が、薄く眼を開いてこちらを見つめていた。
意識は朦朧としているようだ。そのことが彼の胸をざわめかせる。
「駄目だよ。わたしたち、ずっと一緒でしょ?」
聞いて、彼は言葉を詰まらせた。
「あなたと離れ離れになるなんて、嫌だよ……」
轟音がした。炎が迫っていた。
その中で、少女は手を伸ばした。少年がその手を取った。
その瞬間、赤い炎が全てを包んだ。
◆◇◆◇◆
事故現場には、既に黒く焼け焦げた車体しか残っていなかった。
その電車はちょうど山間部を通っていたため、消火や救助が間に合わなかったのだ。
あるのは死体だけだった。
現場検証のために踏み込んだ警官の一人がそれを発見した。
十代後半と思われる二体の焼死体。既に冷えて縮こまったそれらは、手を取り合って死んでいた。
警官はしばらく静かにそれを見下ろし、それから手を合わせた。
願わずにはいられなかった。死をくぐりぬけても、それが二人を分かつことがないようにと。
秋の冷たい風が吹いて、去った。
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