過去ログ - ペルソナっぽい悪魔設定のシェアワでお話を書いてみたい人集まれ
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[saga]
2012/05/15(火) 21:04:12.42 ID:RB+3zDE9o
「誕生日おめでとう、ラファエル」
頭をなでてやると、弟は照れ臭そうにはにかんだ。
「ありがとう……お姉ちゃん」
夜も更けて、いつものように酔いつぶれた父親が、くたびれたソファーで泥のように眠っている。
彼が寝静まってからが彼女と弟の時間だった。
窓から差し込む月の光以外明かりはなく、部屋は薄暗い。その中でろうそくが灯った。
椅子はないため二人で床に直に座りながら、小さい声でハッピーバースデーを歌う。
歌いながらサラは、後ろ手に隠していたプレゼントを取り出して、弟に手渡した。彼が小さく歓声を上げた。
綺麗にラッピングされたそれを開けて出てきたのは小さな腕時計。
無論、父親の目を盗んで溜めこんだ程度の金額では高価なものは買うことはできない。
それでも彼女がどれほどの思いでやりくりしていたのか、弟はきちんと理解していたし、事実うれしくてたまらなかったようだった。
微妙にサイズの合わないそれを腕に巻きつけてラファエルはひとしきりはしゃいでみせた。
だが、それから何やら神妙な顔になって、言った。ごめんねお姉ちゃん。
サラが何のことかと聞き返すと、弟はうつむいて、僕、何もお返しできてない、と声を湿らせた。
彼女は静かに弟を抱きしめると、いいの、とその耳元で囁いた。わたしはあなたのうれしそうな顔を見るのが何よりも好きなの。
それでは納得できないと弟は涙をこぼした。
じゃあ、と彼女は笑った。あなたが大きくなったらお返ししてちょうだいね。
弟はサラの目を見つめると、力強く頷いた。
弟を失ったのは、それから八ヶ月後のことだった。
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