過去ログ - さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜
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631: ◆ySV3bQLdI.[ saga]
2012/10/01(月) 02:38:03.98 ID:RipvUQ6So
 
「……ちっ! 食い物に罪はねーからな……」

 掴んでいた零の胸倉を突き放し、反動で椅子に戻る。
 いや、折れたという表現は杏子が認めない。ここで暴れれば、自身の言葉が確実に嘘になる。
それを嫌ったのだ。

 杏子はフォークを手に取ると、ケーキに突き刺して丸ごと口に運ぶ。
その瞬間の口元の綻びようは、普段の刺々しさや強かさ、素っ気なさを微塵も感じさせない年相応の少女。
 不覚にも隠し切れずに笑みがこぼれてしまった杏子はキッと零を睨むが、零の視線は既に外れていた。

 気を回した訳ではない。
 特に関心がなかった。

 安堵して手当たり次第に手を伸ばす杏子にも構わず、零の注意が向いているのは店内のある一席のみ。
 一時、子供に戻った少女を微笑ましく思うこともない。
 休息の時間は終わり。その眼、その思考は、獲物を追う狩人に切り替わっていた。



 杏子が来てから二十分少々。テーブルの上はほぼ片付いてきていた。
 零もたまに摘まむが、ほとんど平らげたのは杏子。会話もなく黙々と食べ進めた。
途中、何度か視線が交わったが、急かされたりもしなかった。
 
 折角の機会だからと、じっくり味わいたかった。
 さっさと食べ切ってから本題に入りたかった。
 どれもあるが、一番の理由は待っているのだ。

 零の纏う空気が変わったのを察している。零が時を待っているように、杏子も"その時"を待っている。
 零が動いたのは、杏子が最後の皿に手を付けた頃だった。




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