過去ログ - さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜
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922: ◆ySV3bQLdI.[ saga]
2012/12/31(月) 23:50:23.26 ID:kS6KKwzDo

 何分くらい、そうしていただろう。
 靴を脱ぎ揃え、いよいよ死への一歩を踏み出そうとした、その時。
 屋上のドアが勢いよく開かれた。

 現れたのは女。
 フェンスを挟んで、涙ながらに説得を始める。
 だが、男は拒んだ。それどころか女を激しくなじった。
 
 お前が好きだったのは俺の才能だろう、と。
 自分が諦めた夢を押し付けるな、と。
 俺はお前の代理でも夢の道具でもない、と。

 そんなふうに思われていたことは内心ショックだったが、女は怯まなかった。
 彼は正常な精神状態ではない。
 だから、すべてが本心だとは思えない。いや、思いたくなかった。

 押し問答が続いて数分。
 このままでは埒が明かないと、女もフェンスを乗り越えた。
 一歩進めば墜落死は間違いなしの狭い足場。強風も相まって、足の震えが止まらない。
 そんな場所でも、女は呼びかけ続けた。

 もう一度、抱き合えば心がわかると思った。
 想いは伝わると思った。
 これまで、ずっとそうだったから。きっと、今度もそうに違いないと。

 男は女を突き放した。
 だが、それは彼女の為というより、静かに迎える最期の時を邪魔されたくない感情が強い。
 すれ違う気持ちに打ちのめされ、女も平静さを失っていく。



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