過去ログ - さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜
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962: ◆ySV3bQLdI.[ saga]
2013/01/21(月) 02:37:52.18 ID:CVB6/PeJo

 最早、押し潰されそうな不安は感じない。
ビクビクしながら日々を過ごすことも、ふと正気に戻った瞬間に後悔に苛まれることもない。
 女が恐れるとしたら、それは唯一の天敵の存在のみ。

 女は、恋人が死んだ廃ビルに通う。
 人間であった頃は犯罪の露呈を恐れ、また、あの日の出来事を思い出さぬようにと避けていた場所。
 だがホラーと化した今、忌まわしい記憶など顧みる必要はない。痛む良心など持ち合わせていなかった。
 
 ここはただの廃墟。むしろ、都合のいい餌場だった。
 その理由が、いつの間にか廃ビルに住み着いた魔女。
 この魔獣とも異なる異形に印をつけられ、連日の如く哀れな人間が誘われてくる。
 それを摘まみ食いするのが目的だった。

 人を狩るのは造作もない。だからこそ自分で物色し、手を下すのが醍醐味ではあるのだが。
 やはり、労せずして獲物が舞い込んでくるのも捨て難い。
絶望していたはずの人間でも、死の間際には表情を恐怖に歪める。

 魔女は移動を繰り返していたようだが、本格的にここを住処と定めたらしい。
 ホラーの気配に気付いていないとは思えないが、特に妨害する様子もない。
 魔女が何を考えているのか。見当もつかなかったし、どうでもよかった。

 そして彼女は、今日も屋上に立って獲物を待ち焦がれる。
 ただ、その日は少し事情が違った。

 現れたのは少女三人と男が一人。
 全員、はっきりとした意思の光が瞳に見て取れる。
特に、先頭の少女と最後尾の男の目つきは鋭い。一目で魔女に誘われたのでないと見抜く。

 こんな廃墟を、自らの意思で好んで訪れる者。
それは、ここを餌場とする怪物たちを狙う狩人だけ。



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