過去ログ - さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜
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988: ◆ySV3bQLdI.[ saga]
2013/02/09(土) 01:18:09.48 ID:icOT/Ycyo

「……あんたが?」

 ここまで連れて来たのか。
 最後まで言わずとも、零は意図を理解して頷く。

「意外と重くて大変だったぜ」

 言わなくてもいい、余計なひと言まで添えて。
 杏子は顔を上げ、零をキッと睨みつけるが――ほどなくして、しゅんと萎むように目を伏せた。

 やはりダメだ。怒る気にもなれない。
 寂寥感とでも言うのか。泥のように重く、心にこびり付いている。
ただひたすら虚しくて、悲しくて、心が燃え立たない。

 俯いて視線を彷徨わせていると、不意にそれが留まった。
 目に入ったのは、真っ直ぐ伸ばした両足。スカートは捲くれ上がり、太股は露わになっている。
片側の太股に白い布が巻かれていた。

「もう出血が止まりかけてるんだから、大したもんだな。魔法少女ってのは」

 零の言う通り、白い布の中央には赤が滲んでいたが、ほとんど広がる様子はない。
 傷口を拭って布を巻いただけの簡単な処置だが、とりあえずは充分と判断したのだろう。
 魔法少女の自己治癒力は高い。そこに本人の意思は介在していないが、それでも思う。

――あぁ……あたしは、まだ生きようとしてる。生きたいと思ってるんだ……。

 数秒、遠い目をした後に杏子は身体を起こし、壁に手をつき膝を曲げる。


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