過去ログ - さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜
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999: ◆ySV3bQLdI.[ saga]
2013/02/11(月) 03:42:12.50 ID:YBVQg99/o

――だったら、あたしは……いったい何の為に生きてるんだろう……。

 わかっている。
 全部、覚悟の上で決めたこと。今さら後悔なんてしない。
 不意に感傷的になってしまい、虚しくなっただけ。


 思考を打ち切り、立ち上がる杏子。
 軽く爪先で床を叩く。ほとんど痛みは消えていた。
 冷たい雨に踏み出すと、

「……今日はいいよ。興が殺がれちまった……」

 零を見向きもせずに言った。
 何の為にここに来て、何をしたかったのか。それを見失って、一緒に戦意も消えてしまった。
 もう、ここに留まる意味もない。
 
 ずぶ濡れになりながら杏子が歩みを再開すると、背後で水溜まりを叩く靴音。
 その直後に、

『放っておきなさいな。いい薬かもしれないわ。これで迂闊にホラーに近付かなくなるでしょうよ』

 とシルヴァの声。
 暗い眼差しで振り向くと、零も雨の中を追ってきていた。
 彼は何を言うか迷っていたが、やがて杏子の背中に一言を投げ掛けた。

「あんこちゃん! 今日の分の借り、次の機会に取っとくぜ」

 杏子はギリ、と歯を噛み鳴らす。白くなるまできつく握られた拳には爪が食い込み、

――何が借りだ……!
命助けられて、あんな醜態晒して……!
とっくに貸しなんて返されて、お釣りがくる。
むしろ借りを作ったのはあたしの方じゃねーか……!――

 一瞬、怒りという名の炎が燃え上がるが、それもすぐに雨で掻き消される。
 虚しい。今は何もかもが虚しかった。

 冷え切った心を抱え、杏子は傷付いた足を引き摺って去っていく。
 零は暫し小さくなる背中を見送っていたが――やがて自らも背を向け、逆方向へと歩き出した。




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