過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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134: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:51:45.47 ID:h7sEMOtHo
ぐったりと脱力したワルキューレを抱きかかえ、運ぶ最中に彼はふと思い出す。
かつての旅の途中、毒に倒れた「魔法使い」を抱いて、雪深い山麓の村を目指した時の事を。
猛烈に吹き荒ぶ自然の息吹の中、息を乱して、震える彼女を抱きながら歩いた事を。

時間にして、5分ほどの間。
懐かしく、険しい旅の事を思い出していた。
足を取られるような深雪ではなく、平坦な床。
身を切るような寒風ではなく、厳かに整えられた「城」の空気。
しかし腕の中には、かしましい仲間をどこか想起させるような、「ワルキューレ」。

林檎のように染まった頬。
苦しげに喘ぐ口元。
潤み、熱が籠ったように赤くなった瞳。
どれも、彼がかつて腕の中に抱いていた仲間を思い出させるようだ。

―――あいつらは、どうしているんだろうな。

瞬きほどの間、浮かんだ感情は微笑みとなって消えた。
3年の時を経ても、仲間たちの顔は鮮明に思い出せた。

横断するように魚の骨のような傷を刻まれた、あの屈強な男の顔も。
底無しの慈愛を湛えた、どこまでも柔和な、それでいて決意を感じさせる彼女の顔も。
歯に衣着せぬ物言いだが、決して悪意ある人間ではなく、彼に時折熱を帯びた視線を向けていた彼女の顔も。

容易く、思い出せた。



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