過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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17: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/26(月) 05:23:18.45 ID:5OyPL7Mao
その光景を見て、一気に血の気が引いた。
全身の動脈が、脳へ伝えるはずだった酸素を持って、心臓へ引き返したような。
赤血球の一つ一つが怯えているかのように感じて、駆動しなくなった血管によって、全身が寒気に襲われたような。

再び身を包んだ悪寒とあまりの恐ろしさに、失神してしまいそうになる。
不意に力が抜けた足のせいで肩に全体重がかかり、その鈍痛で、再び意識がはっきりとした。

サキュバスA「人界では精巧な再現はできなかったようですが、これは大丈夫。ちゃんと、貴女の中をぐちゃぐちゃに引き裂きますわ」

楽しげに、その器具をガチャガチャと弄んで言う。
ワルキューレの中に、漠然としていた彼女への印象が収束を始めた。

―――この女は、本気だ。

鳥肌が立ち、置かれた状況を再び認識して震え出す。
それでも抑え込んではいるようだが、あまり効果は見られない。
力を奪われている。
頑丈な鎖で拘束されている。
装備も全て奪われ、救援は見込めない。
今彼女がいる場所はただの牢獄ではなく、「拷問部屋」だ。
そして、目の前にいるのは、恐ろしい道具を手にした「淫魔」。

サキュバスA「……あら?顔色が悪いわ。どうなさいましたの?」

わざとらしく道具を左手で弄びながら、ゆっくりと近づいていく。
燭光に照らされたその顔は、ワルキューレには直視できなかった。
もし見てしまえば、今度こそ、みっともない命乞いを吐き出してしまいそうだったからだ。

サキュバスA「…ひょっとして、怯えてるの?……最後まで聞きなさい。私は、『どっち』と訊ねましたわ」

顔を直視しないようにして、ワルキューレはおずおずと視線を向ける。
左手には、相変わらず、恐ろしい想像を掻き立てる器具。

次いで突き出された右手には―――何も、持っていなかった。


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