過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/26(月) 05:27:38.53 ID:5OyPL7Mao
ワルキューレ「ひ、ゃっ……やめ……へ……」
間の抜けた舌足らずな懇願は、水音高くもつれあう唇のノイズにかき消された。
一種の甲殻類の交尾のように、二つの唇が絡み合う。
力を入れて、無理やりに奪っているわけではない。
彼女の背中に腕を回し、片手で後頭部に手を添えてはいるが、力は入れていない。
思い切り頭を振れば、逃れられるというのに。
傍目にはそれすらも試みていないように見える。
口内を満たす、危険なほどに甘い吐息。
頭蓋に反響して跳ね回る、一方的に唇を貪られる水音。
拘束された状態による異常なまでの被虐の興奮が、それらを「快感」へと昇華させてしまっている。
だが、彼女は認めたがりはしない。
「ワルキューレ」としてより、生来の彼女の性格がそうさせる。
淫魔の国の、それもたかだか一人の淫魔に遅れを取っている。
それを、彼女は許せない。
恐らく、単純な腕力なら彼女の方が上だろう。
従来の力さえあれば手枷を引きちぎり、眼前の淫魔を、たとえ素手のままでも縊り殺せるというのに。
しかし、力は奪われた。
戻るのかどうかすら定かではなく、体がずんと重くなるような倦怠感が、今も残っている。
そのハンデによって、今の彼女は人間の、それも非力な女性と同程度の力しかない。
手枷を千切る事など、夢のまた夢。
もしも淫魔が少し力を加えて彼女の腕を握り締めたなら、間違いなく骨が砕けてしまうだろう。
力を奪われてさえいなければ、その立場は逆になっていたはずなのに。
屈辱感と羞恥心に彩られた、唇への陵辱はなおも続く。
薄暗く湿った拷問部屋に、聞こえるのは二つの吐息と水音。
ワルキューレ自身も気付いてはいないだろうが、確実に、吐息のベクトルは変わってゆく。
唇をふさがれ、それでも酸素を取り込もうとするためではなく。
与えられる快感と淫靡な空気に酔い、艶めかしく蕩ける、切なく苦しげな息遣いへと。
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