過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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61: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 02:50:18.55 ID:h7sEMOtHo
寝室に辿り着くまでの間、使用人とすれ違うたびに興味の視線を浴びた。
彼女を知る者なら、思わず振り返って見てしまうような、意外な光景だからだ。

珍しいものを見るかのような視線に晒され続け、寝室に着いた頃には、
肌は赤みが差して顔を俯かせていた。
あらかじめ半開きにさせておいた扉を押し開け、幾たびもの夜を過ごした寝室へ入り込む。

足で扉を閉め切った後、まっすぐに天蓋つきのベッドへと向かう。
暖炉には火が入れてあり、立場が逆とはいえ、冷え切った地下室で過ごした体を暖めようという配慮が見られた。
勇者が抱きかかえて連れてきた事、そして道中に伴う羞恥心で既に暖まってはいた。
それでも暖かい空気が肌を撫でると、ほっとするような、じんわりとした暖かみが沁みたようだ。

勇者は、ベッドに彼女の体を優しく下ろす。
ほどけるように首に回されていた腕が解かれ、ベッドの上に彼女が横たわる。

サキュバスA「……申し訳、ありません」

勇者「何が」

サキュバスA「お見苦しい所を……お見せして……」

勇者「野暮な事を言うなよ」

サキュバスA「あっ…!」

服も脱がず勇者は彼女に圧し掛かると、二人分の体重が一所に集まり、マットレスが大きく沈み込む。
彼女の両肩の辺りに手を突き、勇者が、彼女の瞳を覗き込み、しばし押し黙る。

―――ああ、この目は、見た事がある。
―――あの、「最初の夜」と同じだ。

既視感にはっきりと心当たりを見つけ、胸中を、懐かしく、苦く何かがこみ上げた。
その正体は、「勇者」だけが知っていた、「過去」でもあり、「現在」の記憶。
「勇者」だけが覚えていて、今では「勇者」以外知る者がいなくなった、七日間。
記録になど残らない、記憶にしか残らない七日間。

何かが頭の上から圧すかのように―――唇が、下りていく。


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