過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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76: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:00:33.52 ID:h7sEMOtHo
勇者「……何て声、出すんだよ」

静かに息を立てながら、時々身を震わせる彼女の顔を眺めて呟く。
乱れて顔にふりかかった髪をどけてやる。
泣き疲れて眠った少女のように、触れがたい美しさを湛えていた。
身を焼き尽くすような情事の後だというのに、だ。

勇者「…………そう、だな」

涙と唾液で濡れた顔を、優しく撫でる。
こそばゆさを感じたのか、彼女の喉奥から息が漏れる。

勇者「…叶えてやれるのは、俺しかいないんだな」

沁み込ませるように、呟いた。
その顔はほんの数分前までとは違い、優しく、それでいて寂しさもはらんでいた。

彼女は、自らでも抑えきれない、被虐の性癖を持っていた。
それ故に――加虐にも、長けていた。
正反対であり、鏡のような性質は、彼女の中に同居している。
過剰なまでの性癖が暴走して、今夜の情事、ひいては自重もできない、あの階段での自慰にまで繋がってしまった。

生来の彼女の態度は、もしかすると演技なのかもしれない。
自らの、業の深すぎる性癖を一歩引いて見ている為に、どこか飄々とした態度を取らざるを得ないのかもしれない。

淫魔として生まれた事は、彼女にとっては不幸だったのかもしれない。
人間の精を絞り取り、魔力として王へと献上する「働きバチ」の役目を果たさなくてはならないから。
もし一人の人間の女であったのなら、その性癖を満たす術がいくらでもあった。
街頭に立ち、夜をひさぐ事もできたかもしれない。
割れた欠片へと合致する、もう一つの「欠片」を見つけ、主と奴隷として添い遂げる事もできたかもしれない。

でも、それは―――望めない。
なぜならば、「淫魔」として生まれてしまったから。


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