過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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85: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:07:35.93 ID:h7sEMOtHo
朝食を終えると、彼は、真っ直ぐに地下牢へと向かった。
腹ごなしの運動というには不足だが、好奇心は抑えきれない。
長い石の階段を下っていくと、反響した足音が遠く響き渡り、
それでいて、後ろから誰かがついてくるような音にも変わった。
陰鬱で恐ろしい空間へ続いている、という事からも鑑みて、ゾッとしないものがある。
単なる反響と分かっていても、そう処理するには難しい。
大袈裟な恐怖でこそないが、心から落ち着きを奪う程度には恐ろしい。
それは、世界を救った「勇者」であっても、例外ではなかった。


階段が終わりに近づくと、気配がした。
淫魔のものとも違う、ローパーとも違う、張り詰めた空気感。
懐かしい空気を肌に馴染ませながら、拷問部屋の、「彼女」を幽閉した一角に近づく。

勇者「何だ、起きてたのか?」

ワルキューレ「貴様…………。ここから、出せ」

勇者「飽きもしないヤツだな」

ワルキューレ「うるさい!……頼む……お願いだから……」

勇者「んん?」

ワルキューレ「お願いだ……ここから……出して………。出してくれ……」

鉄格子越しに、弱々しい懇願が聞こえた。
既に捕縛時の威勢などなく、折られかけた心は、体に力を注いではくれない。
立つことすらできず、ぺたんと座り込み、鉄格子に手をかけ、俯きながら声を漏らすだけ。

勇者「…………何をしに来たんだ?」

ワルキューレ「……」

勇者「……俺を、殺しにか?」

ワルキューレ「…………」


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