過去ログ - 台本を数行書いたら誰かが地の文付きで描写してくれるスレ
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)[sage]
2012/03/29(木) 00:50:28.24 ID:ZMuBAZAe0
>>2で駄文ですが

「……これは……血っ!?」
 彼女の首元にべっとりとへばりついた、赤くどろどろとしたそれ。
 燃えるような赤、紅をしたそれは、俺がこの世界で最も愛した少女の服を染め上げていた。
「…………」
 彼女は、決して動かない。まるで動力を抜かれたロボットのようにその場に横たわって、冷たい地面に肌をつけていた。
「女、おい、大丈夫かっ!」
 なんとか喉から絞り出した声が静かな空間へと響きわたる。そして、その声が目の前の彼女に届くことは、きっと。
 どうしても認めたくなかった。傍にかけより持ち上げたその体には、どこにも力が込められてはいない。
 支えた背筋から伝わる重みが、いつもより何倍も多く感じられた。
「おい……女、お前が居ないと俺は……」
 無尽蔵に湧いて出る絶望が俺の全てを覆い尽くしていくようにも思えた。
 暗い、暗いその中で僅かばかりの光を放つものがある。
 楽しかった記憶。嬉しかった記憶。悲しかった記憶の数々。
 買い物に出掛けたは出掛けたのだが、目当てのものを手に入れることができず不貞腐れ口論となったあのとき。学校の帰り道の途中で店に立ち寄り、ケーキを頬張って満面の笑みを浮かべ、その可愛らしい顔を見せつけてきたとき。明かりを消した部屋の中で肌を寄せあって、お互いの温もりを感じあったとき。
 他にも数えきれない想い出がまるで走馬灯のように思い起こされ、俺の中の暗闇を照らし続けている。小さな輝きを保ち続けている。
 でも、それももうおしまいだ。
 彼女は、女はもうこの世界には存在しない。あの太陽のような笑顔も見ることはできないし、二人一緒にくだらない談笑を交わすこともできない。
 だって、彼女は。

 死んでいるのだから。

 記憶は色褪せる。彼女との想い出がはいずれその光を失い、飲み込まれてしまう。彼女との新しい想い出を手に入れることは、この先一生叶わない。
 ああ、絶望が、闇が俺の全てを飲み込んで……



「その言葉が聞きたかった」
「えっ」
 不意に抱き抱えた女の体がひとりでに動きだした。しかも喋りだしやがった。
 どういうことなのだろう。確かに彼女は死んでいたはずなのだ。決して動かず、大量の血液を流して……
 いや、待て。そう言えば彼女の体が妙に温かかった気がした。死んでいたはずなのにも関わらず、その温もりを保ち続けていたと言うのはどういうことなのだろうか。
 ……というか、先程から甘ったるい匂いがするのは何でだろう。しかもそれは、何故か女の首元から匂って……というかこれは血液と言うか、なんというか……。
「ただのイチゴジャムだよ、これ」
 そういって彼女はベッタリと付着したそれを指先で少しだけとり、俺の眼前へとつき出した。
 なるほど、確かにイチゴジャムである。何故こんなものを血液と間違えたのかわからなくなるぐらいイチゴジャムである。
「…………」
 呆然としたまま、時間が流れる。それをおかしく思ったのか、心配の声を彼女は俺にかけ続けているような気がした。
 女は、死んでいなかったのだ。
 その事に対する喜びと感動、そして騙されたことによる怒り等がごちゃ混ぜになって本当によくわからない感情が俺のなかで生まれつつある。

 どうしようもなくムシャクシャしてきた俺は、本気で心配し始めた女の胸にとりあえずダイブをかましてみることにした。多分このくらいは許されるだろう。


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