過去ログ - 台本を数行書いたら誰かが地の文付きで描写してくれるスレ
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28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/03/29(木) 01:42:42.45 ID:4T7xq126o
>>19

「もう、朝か」

 翌日、俺が目をさますと、ベッドの脇に置かれた布団はもぬけの殻だった。
 部屋を見回しても女はいない。俺は立ち上がってダイニングに向かった。
 
 どこかに彼女はいるだろうと思って、牛乳を飲んでから家中を探してみたが、その姿はどこにも見つからなかった。
 他の部屋にも、浴室にもトイレにも、誰もいなかった。気配すらしなかった。

 不思議なほど落ち着いた気持ちでダイニングに戻ると、テーブルの上にメモの切れ端を見つけた。
 そこには、

「またね」

 とだけ記されていた。驚くほど綺麗な字だった。「またね」という文字のすぐ下に、彼女の名前が添えられている。
 俺はその三文字の書置きをしばらく眺めた。何度眺めたって字数が増えるわけでもないのに、何度も何度も読み直した。

 少しして、彼女が出て行ったのだという事実が奇妙なほど自然に理解できた。
 しばらくぼんやりと立ち尽くして部屋の中を見回してみたが、その書置き以外に彼女の痕跡と言えるものはなにひとつ残っていなかった。

 俺はその事実を口に出してみることにした。そうすることで自分自身を納得させられるような気がした。

「……あいつ、もういっちゃったのか」

 言葉にしてみると、すとんと腑に落ちるように、その事実は俺の胸に静かにしみこんだ。窓から柔らかな日差しが差し込んでいた。



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