過去ログ - 黒井社長「行くぞっ!!青二才っ!!」(アイマスSS)
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2012/03/29(木) 12:35:29.64 ID:lnWJ8GSr0
しかし俺達は彼女達の心までは治してやることは出来なかった。精神面での治療も施してはいたが、それ以上に彼女達の心の傷は深刻なもの
だった。フラッシュバック―――何の前触れもなく過去のトラウマが甦り、患者をひどく苦しめる精神疾患である。彼女達はそれに苦しめられた。
それから半年の間に、フラッシュバックを起こしたひとりが突発的に施設の窓から身を投げ、もうひとりは度重なるフラッシュバックで徐々に心が
弱り、ベッドの上で眠るように息を引き取った。これで助け出した少女達はツキコひとりだけになってしまった。ツキコもフラッシュバックに苦し
んでいたが、彼女は夜になると月を見て落ち着きを取り戻すので、他のふたりより精神的に安定していたのが助かった要因らしい。
しかし安心は出来ない。ツキコまで死んでしまったら、もう俺達は立ち直れない。俺は思い切って、ボスに自分をツキコが回復するまでの世話係
にしてほしいと申し出た。ボスはふたつ返事で了承した。正直組織の人手は足りてないが、ボスも同じ思いだったのだろう。まだ組織の中でも日
の浅い俺は適任だった。こうして俺は、組織の任を離れてツキコにつきっきりで面倒を見ることになった。風呂やトイレは施設の女性スタッフに
お願いしたが、それ以外はほぼ四六時中、ツキコの傍で彼女を見ていた。
ツキコは美しい少女だった。例のカルト教団は天使を作り出そうとしていただけあって、他の少女達も皆美しかったが、ツキコは特に美人だった。
そして頭も良く、試しに日本語を教えてみると、少しづつ話せるようになった。ちなみに俺の事は、ボスがツキコに執拗に「青二才」と呼ぶよう
に教え込ませたので、「あお」と呼ぶようになった。ちくしょう。ついでにボスのことは、誰が教えるでもなく「くろ」と呼ぶようになった。
「犬みたいですね」と笑った部下のひとりが、翌日何故か丸坊主になっていた。理由は知りたくない。
「あお、おなかすいた」
「待ってろ、りんごむいてやる」
「いい、つきこやる」
「お前まだ指動かないだろうが」
「やる」
「ああもう……わかったよ。でもナイフは危ないから、後ろから一緒に持ってやるよ。それでいいか?」
「あお、えっち」
「な……、どこでそんな言葉覚えたっ!?」
「くろ」
「あの野郎……今度来たらコーヒーに砂糖山ほど入れてやる……」
終始こんな感じだった。ちなみにツキコは、ここに来る前の事を覚えていない。フラッシュバック対策として、精神治療で一時的に記憶にブロック
をかけた。いつかは解けるものではあるが、精神が安定するまでは思い出さないようにとの事だった。ブロックの影響で幼児退行までしてしまった
が、こちらも一時的なものらしい。不憫ではあるが、心を蝕むような辛い記憶なら思い出さないほうが良い。たまによくわからない外国語を話す
が、それ以外は基本的にたどたどしい日本語で俺と会話をしていた。
「そうだ、右手でナイフをおさえて、左手でゆっくりまわすんだぞ。ゆっくり、ゆっくり……」
「うん…」
ツキコの後ろに回り込み、ツキコの手の上からりんごを持って、一緒にゆっくりむいてやる。ツキコのうなじあたりから、女の子のいい匂いが
する。
……やばい、さっきのツキコの言葉に動揺して、だんだん変な気分になってきた。
ツキコは同年代の女の子にしては背が高いうえに妙に発育が良いので、たまにドキッとさせられることがある。世話係を申し出た時も、同僚全員
に「手を出したら分かってるよな?」と凄まれた。元傭兵や殺し屋共が真顔でそんな事を言うからマジで怖かった。ボスも来るたびに「何もして
ないだろうな?」と冗談めかして(ただし目が笑ってない)、聞いてくる。外見だけ見たら最高にイイオンナではあるが、内面が幼稚園児の純粋無
垢なこどもに、そんな邪な感情を抱いたりしねえよ。それにツキコには、何だか近寄りがたい不思議なオーラがあった。銀髪紫眼という物語の中
から出て来たような浮世離れした容姿もさることながら、お姫様のような品の良さも何気ない仕草から見て取れた。内戦の混乱の中から連れ出し
てきたから詳しい身元は分からないが、もしかしたら俺達とは住む世界が違う人なのかもしれない。
「あお、かわむけた」
「おおそうか、じゃあ次は半分に切るぞ」
……まあ今のコイツは、可愛い妹みたいなもんだけどな。いや、中身は幼稚園児だから娘か?まだ家庭を持つような年齢ではないが、いつか結
婚して娘が出来たら、こんな風に過ごすのも悪くないな。その前にまずは嫁か。ツキコみたいな美人な嫁さんゲットして……って、何考えてる
んだ俺はっ!!
「あお、どうした?」
「ななな何でもなななない、さあ、つつつ続きをやるぞぉーっ!」
「?」
気を取り直して作業に戻る。ツキコの柔らかい手の感触を意識しないように……。しかし何の考えもなくツキコをだっこするような形になって
しまったが、冷静になってみると結構マズい体勢じゃないかこれは?いちゃついてるバカップルに見えなくもない。誰かに見られたら絶対誤解
される。さっさと終わらせて「差し入れだぞおー。元気にやってるかあー」「あ、くろだ」「」
病室のドアを開けて、缶コーヒー片手にボスが入ってきた。ホント空気読めませんよねアンタ!
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