過去ログ - 黒井社長「行くぞっ!!青二才っ!!」(アイマスSS)
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30:1 ◆6aY2CdF7PY
2012/03/29(木) 14:05:17.34 ID:lnWJ8GSr0
第三章

「さて、昔話はこのへんにしといて貴音の今後の事を話しましょか」

一段落したところで、御当主が切り出した。そうだ、陰陽師にしないという事は、貴音はどうなるんだ?

「やはり四条家でもあの子の『力』は大変か、御当主」

社長が不穏な言葉を口にする。力?大変?一体何のことだろう。

「キミィ、貴音を見た時に感じなかったかね?あのでかいオーラを」

「いや、元々綺麗でしたけど更に凄みが増したというか、とんでもない美人になったなあとは思いましたけど……」

オカルト関係の話はさっぱりわからん。御当主達に会ってその存在を認めざるを得なくなってしまったが、依然として俺には何も見えないし、
そもそも見たくない。

「あの子が聞いたら喜びますわ。でもねあおはん。事態はちぃとばかし厄介なんですわ」

「どういうことですか?一体何が起こっているんです?」

思わず俺は聞いてしまった。折角貴音は幸せになれたと思ったのに、また何か災いに巻き込まれるというのか。

「あおはん。お月様ってのは、どうして輝いてるか知ってはります?」

御当主が唐突に尋ねる。

「え?……、それは太陽の光に照らされているからではないのですか?」

「ええそれで正解です。お月様というのは、太陽に照らされてしか輝けない。しかしわしら陰陽師の間では、逆の説を唱える者もおるんです」

逆の説?それってつまりは……

「“太陽はお月様を照らす為に存在している”もっと言えば“太陽系惑星は、お月様を中心に回っている”という説ですわ」

天文学者が腰を抜かすようなトンデモ説を、御当主はさらりと答えた。

「月の魔翌力、いや引力とでも言いましょか。潮の満ち引きなんかでよく言われる話ですけど、その本質はもっと別のもんです。月はいろんなもん
 を引き寄せる。ええもんも悪いもんも。強いもんも怖いもんも……」

話についていけなくなってきた。それが貴音と何の関係があるんだ?

「以前に私が、あの子は月の化身なのかもしれないと言った事を憶えているかい?」

社長が言った。そういえばそんな話を聞いたような気がする。

「元々何か不思議な感じがする子だったが、今日成長した貴音を見て確信したよ。あの子は只者じゃないと」

「流石黒井はんやなあ。『月の化身』あながち間違いではありませんわ。あの子は月のご加護を受けて生まれた子です。稀にそういう人間はいる
 んですわ」

昔から月に体調を左右される子だったが、そんな理由があったのか。

「貴音は月の魔翌力をその身体に宿しとります。その引力によって、本人の意思に関係なく色々なものを引き寄せよるんです。国王の娘として生ま
 れたのも、一国の政府に深く関わっとったカルト教団に捕まったのも、この魔翌力によるもんでしょうな」

「私や君、そして四条家も貴音に引き寄せられたのかもしれないな」

御当主と社長が説明してくれた。若いのに随分数奇な運命を辿っているなあとは思っていたが、そんなカラクリがあったのか。

「でもいくら強力でも、その魔翌力が宿主自身を傷つけることはありえまへん。ご加護を受け取るということは、普通は護られとるんですから。
 せやけどあの子の力は、最初に巻き込まれた勢力争いの時に暴走しよったんでしょうな。後の天使の改造手術とかの影響で更に悪化して、
 もう宿主本人にも制御できんようになったんでしょう」

「まあそのおかげで、はるか遠くの国から私が引き寄せられて貴音を助けることが出来たわけだが」

しかし貴音が助かったのは結果論であって、今でもいつ自分が引き寄せたものによって自滅してもおかしくない状況だそうだ。

「わしらは『貴音』という人格を作る事で、あの子の月の魔翌力を制御しとるんです」

貴音の里親に四条家が選ばれたのは必然だったと言えるだろう。いや、四条家でなければならなかった。



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