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663:654[sage]
2014/07/26(土) 00:49:14.61 ID:XKp+N4pK0
>>662
ありがとう

・一人視点って本当に便利いいよね
危うい均衡を描けてるなら目論見どおり

・地の文で「教師」でなく「彼」にしときゃあよかったな、って今思った
けど別の着想得たからこのまま行く
ホントにありがとう

話全然違うけど、>>623に対する批評について聞きたい
元スレ読んでないけどつまり、

陽はすでに遠く、彼方に見える山際に消えゆこうとしていた。
夜気が夏の熱気に混じる中、彼はぽつねんと神社の鳥居の前で立ち尽くしている。

その神社は見るも無残な有様だった。
手水場の水はいつ涸れたのか、降り積もった落ち葉や芥で底すら見通せず、狛犬さえも石造りに苔を纏わり付かせ、風雨に穿たれてもはや原型を留めていない。

かつてあったはずの神所は見る影もなく、人の手から離れて寂れ切ってしまっていた。

しかし彼は、意を決して自然に還らんとする境内を踏み荒らした。
一路、参道を進み、神社の本殿に向かう。
やはりそこも荒れ果てていて、綺麗に糊で張られていたはずの障子は剥げ、ただの紙切れが木枠に絡みついているような状態だった。

彼は一瞬迷うような素振りを見せたが、頭を振りかぶるとすぐに決然とした仕草で閉じられた戸を開け放った。

むわりと饐えたような臭いが鼻をついた。いまだ落ち切っていないはずの陽の光は不思議と殿内には届かない。
ギシギシと軋む床を踏みしめて中に這入った。

途端に鋭い音を立てて背後の戸が閉じた。
驚いて振り向いた彼の目に映ったのは、ぴっしりと紙の貼られた障子戸。
つい先ほどまでは朽ちかけようとしていたそれが、今では新品同然だった。

突然のことに言葉を失う彼の耳が、くすりと笑うような声を拾った。同時に、あるはずのない芳しさが鼻腔をくすぐる。

殿内には間違いなく何者も存在しなかったはずだ。この場における生者は侵入者たる彼一人であって、この神社が記憶しているのは時の流れに埋もれた記憶だけだったろう。

にもかかわらず、彼の背中越しには、明らかに何かの気配があった。あまりに濃厚なそれは勘違いですませないだけの存在感で彼を圧迫した。

彼は歯を食いしばって後ろを振り返った。それ以外に彼に取りうる選択肢は端から存在していなかった。

いつの間にか殿内にはあるかなしかの光がぼんやりと漂っている。
意外と広い本殿の中央、塵ひとつ見当たらない木床に一人の少女が寝そべっていた。

流れるような黒髪は絹のよう、しどけなく寝そべった脚は息を呑むほど白い。乙女の柔肌を隠すべき着物わずかに乱れていて、裾からわずかに胸元を覗かせていた。この薄暗闇のなかで、遠目にも彼女の着物は質感がよく、相当な仕立てであることは瞭然だった。

行儀の悪さを除けば、多少だらしのない良家の娘を思わせる。あるいは口うるさい家老の言葉を煩がるように手をひらひらと泳がせ、悠然と寝台で惰眠を貪っているようなイメージ。
しかしそんな微笑ましさは、この少女に関する限り微塵も存在しなかった。

彼女はおよそ人の情というものを一切感じさせなかった。
その瞳はこの世のあらゆる事物に飽き飽きしてしまったようでいて、あどけなさを残す容貌はどこか冴え冴えとした風もある。
顔色はかすかに青みを帯びていて、血の通いをうかがわせない病的さを示している。
ただ唇だけが鮮やかな血色を示していて、いっそ不気味ですらあった。
玲瓏とした出で立ちは涼やかさよりは背筋を凍りつかせる類のそれで、年齢にそぐわない老成した雰囲気を併せ持っていた。

しかし何にも増して彼の意識上に異常を感知させたのは、その赤い瞳であった。
それが血の色を呈しているなら、禍々しさと同時にある種の人間らしさを与えただろう。
しかし彼女の瞳は磨き上げられた宝石のごとくきらめいて温度を感じさせない。冷め切ったそれが倦怠と揶揄を含んで細められている様はまさしく異様だった。

それは人の理になく、人智を超越して異形の論理を振りかざす。人を喰らい血を飲み干し、天意をすら思いのままに歪めるだろう。

――化け物だ。

こんな感じに書きゃいいの？これであってる？

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