過去ログ - ウルフルン「食っちまうぞー!」みゆき「きゃー!」
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288:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:20:11.51 ID:R+8qzPw10

天を衝く狼の吼声は雨音に掻き消され、今だけは味気ないモノトーンに彩られている七色ヶ丘に、遠く響き渡っていくことはなかった。
なめらかな頬から形の良い顎へと伝った赤い道の通行者が、少女と狼の間の地面に吸い込まれ、水たまりにゆるりと融けていく。

これ以上はもうダメだ。
自分という存在の根幹が、眼前のちっぽけな少女によって壊されかけていることを、狼はついに認めた。
これ以上このあたたかさに触れていたら、いったい自分はどうなってしまうのだろうか。
釜茹でにされるより熱く、井戸に沈むよりも冷たい死が、己を待ちうけている。

そうとしか考えられなくなったとき、狼は両の腕を勢いよく開き、


『うぁああああぁぁぁっぁああああぁあああ!!!!!』




掻き抱くようにして、少女の背に十本の鉤爪を、深々と突き立てた。




『っ、あ』


腕の中で小さな命が痙攣し、細かく震えた。
柔らかで脂の乗った、若い肉の感触が指先から血管を通して心の臓まで伝わる。
狼が求めてやまなかった不幸の甘い蜜が、甘美な命の味がそこにあった。



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