過去ログ - 【Fate】エクストラっぽいホロウ的な何か【デバッグ】
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56:1 ◆sEqVJUZ1Fg[saga]
2012/04/20(金) 00:24:09.02 ID:9PZzlk1Po
 シーン0 【プロローグ:貴女の理由】
 
 手の甲に焼き付いた痛みを覚え、私は咄嗟に視線を向けた。
 そこにあったのは、全く身に覚えのない痣。
 まるで槍を示すような鋭角な三本の線。私は実のところ、それが意味することを知っていた。

「んー」

 数秒の思案。色々思い出したくないことが、後か後からわいて来る。
 下らない家を飛び出して、下らない世界を渡り歩いて。
 そうして行き着いた街で、誰も知らない場所で、最後にもう一度やり直そうと思ったのに。
 まさか終の楽園が、生まれた地獄と同義だった……なんて、笑い話にもならないけれど。

「まぁ、良いか」

 溜め息をついて、呟く。
 逃げられない。どうせ何をやっても逃げられない。
 この身を縛る家系の呪縛は、震える家人たちの凶行ではなく、私の血そのものだと知っているから。
 こんなありきたりな展開、驚くにも値しない。

「ああ、だったら今度こそ」

 今度こそ戦って勝ち取れば良い。
 逃げた故に、私は一度失った。失って、忌々しい呪いだけを受け継いだ。
 ……幸い、景品のことは聞いている。
 全てを叶える万能の杯。抑止の模倣にして現代の芸術品。
 眉唾だと言われていたが、証拠が此処にあるんだから仕様がない。

「じゃ、さっさと準備しますかね……と」

 まずは触媒を探さなければならない。
 負けたら予定通り死ぬだけだ。遠からず散るなら、花程度じゃ割に合わない。
 どうせなら、華のように潔く、血飛沫上げて砕け散ろう。

「ま、散れなかった身で格好をつけても、意味はないかもしれないけれど」
 久しぶりに生家に戻って、家捜しついでにアイツらの顔を見てみようか――。

 * * *
 そうして、私はサーヴァントの召喚を行った。

 手にあるのは黄金のピアス……その欠片。
 光そのものを押し固めた言われる、ある英雄の遺品らしい。
 なんで古代インドに由来する半神の遺品が蔵の中にあるのかとも思ったが、本物ならば私の目的と合致する。

 ……話に聞く"彼"ならば、そこそこ義理硬そうな性格だし。
 ……伝説が百分の一でも真実なら、そこそこ物騒な英霊だ。

「ちまちま斬り合ってなんていられないでしょうし」

 何せ私には時間がない。英霊なんてどいつもこいつも神秘の塊で、呼び出せば縮む寿命なんてそう変わらない。
 だったら派手に勝てるヤツがいい。ついでに、外道に行く必要がないくらい王道なヤツがいい。

「――だから、そこそこ期待してるわよ」

 そうして、何処かの誰かが記した詠唱を諳んじる。
 当たり前だ、こんなにどう考えていいか分からない。

 私の家は、化け物の祖先にとびっきり呪われているだけで、真面目に魔道を伝えるような場所じゃない。
 それなりに使えるのは周りに何人かいたけれど、そういうのもどうでも良かった。
 だからこんな部外者を、他の参加者達は嫌うだろう。空気の読めない馬鹿女だって吐き捨てるに違いない。

(ハハ、本当に違いないし、ソレ)

 規律、規範、空気、ルール。そんな息苦しいモノは、片っ端から壊すに限る。
 幸い私にはその力があったし。……幸か、不幸か、或いは痛烈な皮肉だが。
 ――それ以上の呪いが、今やこの身には宿っている。

「我はこの世全ての……なんだっけ?」

 どうでもいいことを考えていたから、不意に台詞が飛んでしまった。

「まあいいか。手始めに、そのルールを破りましょう。ってな訳で」

 早々に詠唱を中断する。周囲にはなんだか台風のように魔力が渦巻いているし、別に失敗してる訳じゃないだろう。
 こんなのどうせ雰囲気――空気だ。そんなルールじゃ、鬼を縛るには役不足。
 陣の中に、金色の破片を投げ捨てる。

「元々つべこべ言うのは苦手なの。――来なさい、カルナ!」

 その台詞を待っていた、とでもいう様に。
 告げるなり、目前に雷の槍が突き立った。


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