1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]
2012/04/22(日) 21:57:16.49 ID:YAGAKWQI0
冬の朝はひどく寒い。
夜から明け方にかけて冷え込んだ空気が、私の身体にまとわりつきコートやマフラーの隙間から入り込んできて知らず知らずのうちに震えている。
けれど、私はこんな朝がとても好きだ。
寒くても平気。
だって、優しい朝の日差しがぽかぽか気持ちいいでしょ。
歌うようにそう言って笑ったあの人のことを思い出し、私は少しだけ幸せな気持ちに浸ることができるから。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage saga]
2012/04/22(日) 22:03:01.53 ID:YAGAKWQI0
私には、いくつも歳の離れた姉がいる。いや、正確には「いた」だろう。
彼女は私がまだ幼い頃、事故でこの世を去ってしまった。
なんて、これだけ言えば私は悲しい過去を背負った物語の主人公みたいだ。けれど正直なことを言ってしまえば、私にはあまり姉の記憶は残っていないし、覚えているといえば日差しより優しく温かい声で、歌うように語りかけてくる言葉のカケラくらい。
悲しくないといえば嘘になる。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage saga]
2012/04/22(日) 22:22:20.02 ID:YAGAKWQI0
カンカンカンカンカン
踏み切りの音と同時に電車がすごいスピードで通り過ぎていく。いかにも田舎の、野暮ったい電車だ。
私は踏み切りから少し離れた場所に立ち、小さく息を吐いた。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage saga]
2012/04/22(日) 23:09:37.84 ID:YAGAKWQI0
「お?その本どうした?」
「あ、ちょっと」
後姿を追っているうちに、いつのまにか真後ろに立っていた私の待ち人であるさくらが雪に埋もれて少し濡れてしまった本を取り上げた。
今日はなんだか、こんなことばかりだ。一瞬の不覚、とでもいうのだろうか。これが戦場だったらどうとかこうとか。そんなつまらないことを考えながらも、さくらに身体を向けて一緒に本の表紙を覗き込んだ。
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