87: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:07:38.53 ID:yIkrPX16o
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「それにしても驚いたね、まさか魔法少女が魔女になるなんて」
「……私の方が驚いたわ。貴女、全然動じてないじゃない」
「別に、そんなの大したことじゃないから、さ。
私の身体はね、キミに尽くすためのツールなんだ。
確かに私はキミの友達になった、従者ではなく、ね。けれど、私がキミに尽くしたいと思うこの気持ちには何らの変化もないんだよ。
キミのために"どう在るか"、私の関心というのはそれだけなのさ。
もしキミのために魔女にならざるを得ないって言うんなら、私は喜んでそう在るだろう」
「もう、冗談でもそんなことを言わないで!
貴女が居ない世界なんて、もう考えられないんだから」
「ははっ、ごめんごめん!」
*
それは楽しい日々だった。
確かに、インキュベーターに少女を紹介するのは心が痛むし、キリカが血の臭いを発して還る度憂鬱な気分になった。
けれど、二人で笑って、紅茶を飲んで、ご飯を食べて。そんな毎日が、織莉子にとってはとても素晴らしいものに思えたんだ。
織莉子は答えを保留し続けた。
鹿目まどかをどうするか。魔法少女に、ひいては魔女にさせないための方策を、保留し続けた。
けれど策を止め、ただ泥のように幸福を享受することは彼女の良心が許さなかった。
自分は既に、あまりに多くを犠牲にし過ぎている。
その屍の山を忘れてしまえるほどには、織莉子の面の皮は厚くはないのだ。
歩みを止めることもできず、かと言って終着地点を定めることもできず。
あの逆さま魔女が現れるまでのタイムリミットは、日々近づいてくる。
けれど今は、この時はだけは、織莉子はキリカの温もりを味わい続けていたかった。
事を実行すれば、もう自分たちには安らぎが訪れやしないことを織莉子は知っていたから。
キリカが致命傷を負ったのは、そんなある日の出来事だった。
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