95: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:12:43.88 ID:yIkrPX16o
歯を食いしばってさらなる反抗を掛けようとする。
まだ私は死んではいない。死の、その最後の瞬間まで、自分は抗わねばならないのだ。
と、その時だ。
自分と暁美ほむらとの中間地点に、アイツが現れた。
あの、嘘吐き――インキュベーターが。
インキュベーターはさも自慢げに織莉子の計画を開陳した。
千歳ゆまをはじめとする魔法少女たちの勧誘行為に手を貸し、魔法少女狩りなどという騒動を起こしてインキュベーターから鹿目まどかの存在を秘匿したこと。
そしてインキュベーターはほくそ笑んで言う、残念だったね、ぼくは見つけたよ、鹿目まどかを。
織莉子としてはそれが若干的外れであることに失笑を隠せないことだったが、それよりも事態が逼迫していることの方が問題だった。
鹿目まどかのことを知られた。であれば、これだけの惨事が起こっているのだ、彼女は一も二もなく契約するだろう。それだけは阻止しなければならない。
契約する前に、あの少女を始末しなければならない。
「鹿目まどかは最悪の魔女になるのよ、生かしてはおけない!」
「まどかは魔法少女にはさせない、私が」
無駄だ、私は知っている。
どんなに繰り返したとて、お前は決して望む未来を得ることはできない。
あの逆さま魔女を前にして、お前たちは失敗するだろう。そして鹿目まどかは契約して、魔女になる。
そうなれば待っているのは、世界の破滅だ。その事実は変わらない。
「それに……あなたに訊きたいことがあるの」
暁美ほむらが続く言葉を吐こうとした瞬間、織莉子の脳裏に電流のようにビジョンが走った。
それはまさに天啓だった。
鹿目まどかが、愚かにもこちらにやって来ようというのだから。
使い魔たちの群れを掻い潜り、よくもまぁここまで来ようなどと考えたものだ。
だがこれで、ありがたいことに風向きはこちらへと向いた。
あとは時間稼ぎをするだけで良い。あの少女が現れた瞬間、最大火力で吹き飛ばす、それだけだ。
織莉子はありったけの水晶球を展開し、あらん限りの物理エネルギーを持たせて放った。
まるで光の暴風だ。
その威力は低いが、相手の神経系に作用する魔法を込めた。これだけ一度に放てば一時的に足止めするくらいにはなる。
魔力の枯渇が、「全身を内側から寸刻みにされるような痛み」というこれ以上ないくらいの分かりやすい形で織莉子に伝わる。
この痛みは、あの時薔薇の髪飾りをつけた少女が味わったものと同一のものなのだろう。
痛覚遮断では御することの適わない痛みの災禍に身悶えしつつ、織莉子は最大火力を放ち続ける。
そうは言っても多勢に無勢。4対一の戦いに、足止めするのも一苦労の一方的な試合運びとなりつつある。
対峙する魔法少女たちの容赦ない連撃を、精神と肉体との両方を擦り減らしながら往なし、織莉子はとにかく耐えた。
一瞬の隙を突いて、織莉子は再び水晶球を展開する。
撃とうとした瞬間、
「撃たせるか!」
佐倉杏子が槍を投擲する。
紅い矢のような勢いで迫るそれを、織莉子は一旦攻撃を中断して回避する。
そして気付く。その槍の射線上には、キリカの遺骸があることに。
110Res/177.89 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。