過去ログ - 後輩「それじゃ、本当にこれでお別れです」
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59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/04/26(木) 13:11:32.44 ID:Cz0n/SBjo

 自然科学部の部室には誰もいなかった。
 四人分の鞄は置いてあるので、帰ってはいないだろう。例の噂について調べているのかもしれない。

 夕陽が窓から差し込み、赤と黒のコントラストを作り出している。

 俺はパイプ椅子に腰を下ろした。手持無沙汰をごまかすために鞄から小説を取り出したが、退屈でまったく読み進められない。
 
 しばらくぼんやりと考え事に浸っていた。さまざまなことを考えた。
 トンボのこと、ハカセのこと、シラノのこと、幼馴染の女の子のこと、距離ができた妹のこと。
 ちっとも帰ってこない両親のこと、スズメのこと、奇妙な手紙のこと、黒いスーツの大男のこと。
 
 どれもこれも、布の上にばらばらに散らばったガラスの粒のように些末なことに思えた。
 誰のことをどんなふうに考えても、俺の思考はいつも自分自身のことにたどり着く。
 
 結局のところ俺は他人のことなんて考えていない人間だ。自分のことしか考えていない人間なのだ。

 そんな人間が誰かに好かれたりするわけがない。誰かに必要とされたりしない。
(こんなことを考えるのは俺が誰かに好かれたいからだろうか?)




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