過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/05(土) 19:15:43.12 ID:PwLoTL370

 そこで草十郎の遊興は、バイトをする傍らたまの間食がマイブームとなっている。
 草十郎には希望もなければ、身を託すべき理想もない。
 無頼の生活を送っていると言えたろう……だが、山奥の独覚として生を享けた草十郎には、他のどんな生を選ぶこともできなかったのだ。
 暗い眼、鋭く削げた頬、一直線に結ばれた生気のない唇――ある意味では、草十郎のいかにも虚無的な風貌は
 久遠寺邸にはよく似合っていたかもしれない。


 巣立ちを通過し、今、この街を歩かなければならないような青年には皆、多かれ少なかれ、
 草十郎と共通したにおいが漂っているからである。
 が、同じ独覚でも、土桔 由里彦だけはこの街には似合いそうもなかった。
 子供のように小さな老人……土桔 由里彦が、
 すりきれたコートを着こみ、どういうつもりなのか古いベレーをかぶっている姿は、
 キャバクラあたりの小金持ちな遊び人を、どうしても連想させてしまうのだ。



 有珠の話で、老人がアンティーク仲間として懇意にしてることは知っていたから、下宿している彼の姿を老人が見咎めても、
 草十郎はさほど驚きはしなかった。
 一礼して、黙然と注文を覗う草十郎に、


「面白いところに住んでいるんじゃってな……」


 老人が顔を皺だらけにして言った。自分も住みたそうな表情をしている。



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