過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/05(土) 01:16:26.95 ID:PwLoTL370




 ふいに声がかかった。



「……なにか面白いことでもあったの……?」


 草十郎は眼を開けた。
 小柄な、憂鬱そうな表情をした年若い少女が眼の前に立っていた。
 草十郎の目に、どんな表情も浮かんでこないと知ると、


「耳がないの? ねえ? 返事ぐらいしたらどう?」


 少女は居丈高になった。
 最初から、因縁をつけるつもりで話しかけてきたのだろう。
 自分が、彼に立場を思い知らせようという腹らしかった。
 痩せ細った、いつでも憂鬱そうに黙りこんでいる草十郎は、デモンストレーションにはいかにも格好な相手に思えたに違いない。


「ねえ、なにか言ったらどうなの?」


 少女は腰を落として、草十郎の頬を掴もうとした。
 掴もうとはしたのだが、なにか電気に打たれでもしたかのように、その手を宙に止めた。


 少女は戸惑っていた。草十郎の自分を見る目に戸惑ったのである。
 彼女がなまじ手酷い仕打ちをしていたのがいけなかったのかもしれない。
 草十郎の表情が、たとえば怯えとか、怒りとか、闘志というような、彼にとって馴染みの深いものであったら、
 彼女も即座に次の対応に移ることができたろう。
 だが、草十郎の目には、彼女の思ってもいなかった表情
 ――悲哀、それも身体の芯まで凍らせてしまいそうな悲しみの色が浮かんでいたのである。




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