過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
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4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/05(土) 01:21:13.74 ID:PwLoTL370





 ――――ピチチチチチッ




「まあ……いいわ」


 コマドリが堰を切ったように飛びまわる。
 両者の表情にすっかり意思を削がれてしまっていたらしく、その声に救われたかのように、
 少女は無言のまま帰っていった。



 草十郎は再び眼を閉じた。
 ――貴方を愛してるの……。
 なんの脈絡もなく、そんな言葉が彼の頭に浮かんだ。
 




 草十郎は嗤った。
 無意味な生を営々と送っている人間という生き物に対する憐憫。
 そして、それを痛いほどに感じながら、彼らと同様に日々の豊かで閉塞的な暮らしに埋没され慣れていく自分に対する無力感。
 ――その双方が彼をして嗤わせたのだ。むしろ、自嘲に近かった。
 その白けきった空気に迎合するように、鈴を鳴らすような唱が壁を通って聞こえてくる。




  High diddle diddle,
  The cat and the fiddle,




 この唱を聞くと、決まって草十郎の頭に一人の少女の顔が浮かんでくる。
 ――こんな事になる数日前から、少女はいつもこの歌を口ずさんでいた。
 草十郎は思う。あの子が小さな声でこの歌を歌っているのを聞いた時、
 

 この歌はあまりに恨みがましく、女々しくはなかったろうか。
 多分、この歌を歌っている彼女の姿など、見るべきではなかったのだろう。
 あの時から、俺は自分の立場に疑問を持ち始めたのだ。



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