過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
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55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/14(月) 20:55:21.02 ID:8eIhzJZJ0

 三月も半ばを過ぎようとしている。
 その日の昼さがり、延ばし延ばしにしてきた有珠の依頼を果たすために、青子は駅に降り立った。
 夜ともなれば、ヤクザ、男娼、パンパンが群れ集う駅前マーケットも、三月の陽光の下では、
 いくらか猥雑で、底抜けに陽気なだけである。靴磨きの少年たちが喚声をあげて走り回り、
 音質の悪いスピーカーがブギをがなりたてる。脂ぎったモツのにおいと唐辛子のきいたカレーのにおい……。


 マーケットの雑踏にもまれ、あちこちで路を尋ねながら、青子はようやく目的の建物に行き着くことができた。
 建物そのものは、一般の下駄ばきアパートとなんら変わるところはないが、ただ門扉に有刺鉄線をからませ、
 塀の上にガラスの破片を埋めこんであるという物々しさが、ひどく異常なものに感じられた。


 コの字型の建物の、その狭い内庭には人の姿はなく、閉じられた門扉には呼び鈴さえついていない。
 二階の窓にはためいている洗濯物だけが、青子の視界のなかで唯一動いているものだった。
 

 ――どうやって入るのよ?


 青子はしばらく門の前に佇んでいた。
 誰も出てくる気配はなかったし、窓から覗く顔もなかった。
 どうやら、大きな声をあげるしかないようだった。


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