過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
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62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/14(月) 21:23:21.11 ID:8eIhzJZJ0

「しかし……」


 呼ばれた男は、まだ青子を疑っているようだった。


「私なら大丈夫です。話はすぐに終りますから、少しの間だけ――ね」


 唯架の声は優しかった。
 その優しさに押しきられたかのように、男は黙って部屋を出ていった。
 ドアを閉める時に振り返った彼の眼は、主人にかまってもらえない犬の眼を連想させた。


「ふーん……? 随分懐かれてるみたいね」


 意外な気がして、青子はそう訊いた。
 これまでの彼の様子から、てっきり同様に禄でもない人間とばかり思っていたのだ。


「ええ、彼はああ見えて敬虔な神教徒なんです
 ……俗世の利害とは外れ、常に我々の良き隣人となっていてくれます」


「へーえ……」


 そう頷きはしたものの、青子は内心苦笑していた。
 あの男のしぐさを少し注意深い眼で見れば、彼が唯架に惹かれている事はすぐに分かる。
 むろん、唯架もそうと気づいているに違いない。
 気づいていながら、それを神に対する信仰である、と巧妙にすりかえて、男の好意だけ受け取っているわけだ。
 女が長い間に備えてきた保身の智恵だ。彼女も女である以上、その例外ではないらしい。
 が、青子にはいずれ関係のないことだ。有珠の言付けを伝えれば、それで青子の用は済む。



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