過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
1- 20
83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/26(土) 13:50:51.50 ID:l6lpwwcP0

「俺はもう彼女たちの敷いた掟を忘れようと思っています……」


 土桔 由里彦が息を呑むのが分かった。
 が、土桔 由里彦の眼には驚きの色は見えず、怒りすら浮かんでいなかった。
 鳶丸の言葉をあらかじめ予想していたかのように、身じろぐことさえしなかった。ただ、


「できればの……」


 と、独り言のようにつぶやいた彼の声には、深い悲しみが刻みつけられているようだった。


「それが、できればの……」


 鳶丸は無言のまま席を立つと、土桔 由里彦に一礼して、庫裡を出ていった。
 

「掟を忘れることにしたよ……」
 

 鳶丸が再度小さな声で言った。
 土桔 由里彦は返事をしようとしなかった。
 そう、彼は今ひとりの老人と愛に狂う少女たちを裏切ったのだった。
 黙々と足を運ぶ彼に、強い風が吹きつけていた。草木の匂いを濃く含んだ春の風だった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
104Res/75.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice