過去ログ - フィアンマ「オッレルスに性的な悪戯をしようと思う。安価が導くままに」
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406: ◆H0UG3c6kjA[saga]
2012/05/23(水) 16:21:46.72 ID:00GBKUY40


目を覚ますと、オッレルスがぼんやりとした表情で俺様の髪を撫でていた。
どこか虚ろな表情だな、と何となしに思う。
腕を伸ばし、目元にかかる長めの前髪をどけてやると、濁った瞳と目が合った。
俺様はこの瞳の色と、その意味をよく知っている。

例えば、無差別殺人犯のせいで親兄弟全て失い銃口を向けられた幼子の様に。
例えば、強姦され命からがら帰宅したら家が燃えていたか弱い女性の様に。
例えば、苛烈な戦争を終えて祖国へ帰ると、『人殺し』と突き放された元兵士の様に。

逃げ場を失い絶望的な状況に陥り、完全に精神を壊してしまった人間の様相。
そんな空白の感情でもって俺様の髪を愛おしそうに撫でるオッレルスの様子に、思わず閉口した。
眠っている間に何かあったのか。眠る前は普通の様子だったはずだ。
いや、普通だと思っているのは俺様や周囲の人間だけで、オッレルスの精神は確実に『崩壊』していたのかもしれない。
元々、汚染に耐えきったとはいえ『原典』を何冊も閲覧していたのだ。精神自体は摩耗している。

「オッレ、ルス…?」
「…フィアンマ」

部屋の扉一枚隔てた向こう側から、酸化した血…特に腐敗した腑の臭いがする。
そういえば、子供達の声が聞こえない。いつもはそれなりに騒がしい筈だ。
撫でる手を止め、機械仕掛けの人形の様にぎこちなく、オッレルスが微笑む。
背筋に何か寒いものが走った。何か、というより、家の雰囲気そのものからしておかしい。
視線を辺りに隈なくやると、誰のものかわからない血液の付着したナイフが何本も落ちているのが見えた。
どうやら抵抗した側が使ったらしい、持ち手の部分が強く握られたせいで歪んでいる。

「二人、きりだよ。フィアンマ」
「……、…子供達は、どうした」
「これでようやく、二人きりだ」
「質問に、答えろ」
「もう誰にも邪魔される事は無い。気を使う必要性もない。君が望んだ事だ」
「…、…何を言っている。意味がわかりかねるが」
「…Si prega di stare con me molto.…君が言った言葉だよ。俺はその為に最大限の努力をした。もう限界だったんだ。可能性を生かす為には、恐れを排除しなければならない。思い悩めば悩む程、脚どころか半身程既に泥沼に堕ちた状態だった。何よりも最優先すべきものは、俺の中では君だけだった。だからとりあえず、原因を『一つ』消した。残りは二つだが、一つは別に解消出来なくとも問題は無い。籍を入れずとも君を愛している事に何ら変化はないからな。残り一つの問題は…悩む必要もないだろう。とりあえず『結果』が生み出されてから考えればそれで済む」
「俺様は特別な意図をもって言った訳じゃない。殺さずとも他の解決法があったはずだ、だというのにどうして」
「随分と優しくなったものだ。君は必要のないものを戸惑い無く切り捨てる性格だったはずだろう」

にこやかに悪意を吐き出しながら、オッレルスが俺様の頬に触れる。
手で払いながら、慌てて起き上がった。扉との距離が微妙に近くなり、先程よりも存在感を増した腐敗臭が香ってくる。
戦場で感じるものではない。覚悟済みの修羅場ではない。
ましてや、この血液を流した被害者は、何の非も無い子供達のものだ。
ただ家の中に存在していた、たったそれだけで。
俺様よりもオッレルスの中で優先順位が低かった、ただそれだけで。
怯え、持ち手が歪む程強くナイフを握りしめ、恩人からの暴力に立ち向かいながら。
無慈悲に。ただ、歪んだ男の恋慕の為だけに、殺された。

「っう…」
「大丈夫か?」

こみ上げる吐き気に口元を押さえると、男の手がそっと俺様の背中をさすった。
いつもは、先程までは、優しさを帯びた手だったはずだ。
強大な力はあれどその言動故に弱く感じられる、握って支えてやりたくなるような手だったはずだ。
そんな手だったというのに、その存在が、行為が、より一層嫌悪感と吐き気を催させる。

「片付けが中途半端だったせいだろう。少し、掃除をしてくるよ」

そう言い残して、オッレルスが部屋を出て行く。
一瞬開いた扉から見えたのは、何ともグロテスクな光景だった。
床と壁にぶちまけられた臓物と、どうにか逃げ出そうとしたのか壁にいくつかある小さな血の手形。
黙々と血痕などを掃除しているのか、ゴソゴソと物音がする。
小さく謝罪の言葉を呟きながら、俺様もナイフを片付ける。
どうしてこんな事をしたのか、理解出来ない訳でもない。間違っている事位はわかるが。
償いをさせようにも、どうする事も出来ない。
そうか、俺様はこういった方法で世界を救おうとしたのか。
だから、あの男はそうなる前に止めてくれた。だが、俺様にはオッレルスを止める事は出来なかった。気付けなかった。
俺様のせいだ。きちんと問題を認識して止めなかったから、解決しようとしなかったから。


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